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GUNSLINGER BOY Ⅵ

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「大丈夫か?」
「あ・・・っはい」


なるべく怖がらせないようにサングラスを外して問いかけると、少年はぴょこりと弾かれたようにお辞儀をし、静雄を見上げて微笑んだ。
裏表の無い笑顔。
自身もあまり柄の良い見かけではないと自覚している静雄は怯えられるかと思ったが少年にそんな様子は無い。

「本当に助かりました・・ありがとうございます」
「いや、怪我とかねぇか?」
「おかげさまで・・お兄さんこそ、怪我ありませんか?」
「あ、・・ああ、別に」

よかった、と少年は安心したように言った。
まさかこちらの心配をされるとは思っていなかったため慣れない感じに少し戸惑う。
今まで、同じように誰か助けても皆、一言礼を述べてそそくさと逃げるだけだった。

「あの、・・この辺の方ですか?」
「ああ、そうだけど」
「よかった! すみません、ちょっと道をお尋ねしたいんですが××通りへ出るにはどうすればいいですか?」

ちょっと帰り道に迷ってしまって。
そう苦笑しながら静雄を見上げた瞳は黒髪には珍しい澄んだ青色をしていた。
黒髪と変わった色の瞳を持った人間ならもう一人知っているが、そいつとはえらい違いだ。
一瞬、なぜか脳裏に浮かんだこの世で一番むかつく顔をかき消す。
あいつとなんて似ても似つかない。

「××通りならこの次の路地曲がって左行った先だけどよ・・・」
「路地を曲がって左に直進、ですか。ありがとうございます。」
「・・いや、ちょっと待て、危ないからついてってやるよ」

「・・え?」

このまま一人で向かうらしい少年を慌てて引きとめる。
シンプルながら品の良い服装。育ちの良さそうな雰囲気。幼さを残す、控え目だが愛らしい容姿。
そんな子供があまり治安がいいとも言えないこの街を夕暮れ時に一人歩きするなど、サバンナを小鹿一匹で歩かせるようなものだ。
危なっかし過ぎる。
しかし、口にしてからふと思う。
純粋に心配しての提案だったが、これって第三者から見たらまるで静雄が〈子供を引っかける悪い大人〉みたいではないか?
慌てて補足する。

「いや、別に俺は見かけはこんなだけど別に怪しい者ではなくてだな・・その、この街は今お世辞にも治安がいいとは言えねぇから、嫌だったら離れて歩くし・・」
「いえいえ、お兄さんが怪しい人だなんて全然思ってませんけど・・そんな、悪いですよ。助けていただいた上にそんな迷惑をかけるだなんて」
「・・別に、迷惑じゃねーよ。俺と別れた後にお前が襲われたなんて後で聞くことになったら後味悪いしな」

「そうですか・・なら、よろしくお願いします」

そう言って少年はまたぺこりと頭を下げた。
短い髪がふわりと揺れる。
小動物みたいだ、と思った。


作品名:GUNSLINGER BOY Ⅵ 作家名:net