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サイハテ

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 ひとつ、視線を伏せてからアキラが溜息を吐きだすようにして、『症状』をぽつりと話し始めた。話しておいたほうがいいと判断したのだろう。
「いろんなことが分からなくなってくんだ。最初は、買い物の品物を忘れる程度だった。だけど、家への帰り道も、メモを見ないと思いだせない」
 一冊の手帳を取り出す。びっしりと、しかし雑然と書かれたメモの内容に、愕然とする。アキラの言う通り、近隣の店から家までの地図や、風呂場の湯の沸かし方までもがメモされていた。アキラと自分の名がまだそこに書き加えられていないことに、少しだけ安堵して、けれどいつそれが加わってもおかしくない状況に焦燥と落胆を感じた。
「一言でいえば物忘れがひどくなってる、ってことか。……体の、他の部分の症状はあるか? 風邪をひきやすくなったとか、変に体がだるいだとか」
 今度は無言で首を振られる。
 目を背けていた可能性。突きつけられた現実。自分を責めることは容易い。容易いが、何の解決にだってなりはしない。
 非Nicoleもウィルスであることに変わりはない。キャリアの末路を考えるのはたやすい。作用する器官を破壊しながら増殖して――肉体は、その機能を失っていく。そして、非Nicoleの派生元であるNicoleウィルスが作用する器官は……。
「ラインが実際に精神も肉体も強くなっちまう――ってのは、言ってみればリミッターをはずしちまうからなんだ」
「リミッター?」
 Nicoleウィルスの適合者が、まさしく生体兵器としか言いようのない能力を持つ理由。簡単だ。
 本来――人間の肉体はあれだけの能力を発揮できるだけの可能性を秘めている。
「ほれ、人間の脳は本来の容量の30%も使用してない、ってよく言うだろ?」
「あぁ」
 超能力なんか、そんなところから来るのではないかなんてオカルトじみた説明もどこかで聞いた気がする。何かの資料を集めていた時に目にした。
「ありゃ、社会生活を行う上で必要な制限なんだ。ライン――というかNicoleはそれを解いちまう。非Nicoleも、元をただせばNicoleとおんなじウィルスだ、宿主の脳に影響を及ぼす可能性は高い。わかっちゃ、いたことだったんだがな」
 頭をかきむしる。ラインやNicoleの不適合とはまた違った症状。研究所でも見なかったから、思い当らなかった。
作品名:サイハテ 作家名:黄色