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Summer magic

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フランスくんの言葉にぴくりと自分の耳が反応を見せる。


「せやなぁー…ハンガリーちゃんどないするー?」


スペインちゃんが私の頭の上にぽんと大きな手を置いて、にこにこと笑いかけてきた。…しかし、その顔はにこにこと言うよりもによによと言った方が正しいかもしれない。


「…別にどうもしないわよ。あいつに女っ気なさすぎて心配してたくらいだし…」


私ばかり追いかけてちっとも他の子なんか見ようとしなかったあいつに彼女ができたと言うならば、それはきっといいことに違いない。私はあいつの気持ちになど応えられないのだから。


「プロイセンの奴に女ねぇー。想像できないよ、俺は…あいつが他の女に優しくしてんのなんか」


「他の子には見向きもせんかったからなぁ、…なぁ?ハンガリーちゃん」


「…」


勝手にすればいいじゃない。他の子と幸せになりなさいよ。…その方がずっとあんたは笑ってられるんだから。


しばらくするとその店から見慣れた姿の男が出てきて、こちらへ走って向かって来るのが視界に入った。
夏の魔法のせいか、本当にそうなのか、どちらかは分からないけれど、この前会ったときよりも少し背が伸びた気がする。彼女ができると男は男らしくなるのだろうか。……また私の知らないところで勝手に大きくなっていくのだろうか。
そんなことをぼんやりと考えながらプロイセンの姿を見つめていると、息を切らせた彼が私の目の前までやってきて突然持っていた紙袋をぐいっと押し付けてきた。その可愛らしい袋は、先ほどの店の外装のデザインとよく似ており真ん中には小さく店名が刻まれている。


「…なにこれ」


「いいからさっさとそれ着ろ…!」


…はぁ?

いきなり押し付けてきて、何を言うかと思えば今すぐ着ろだと?


「なんで私が着なくちゃいけないのよ」


そう言ってプロイセンの顔を見上げれば勢いよく視線を逸らされた。




…何よ。彼女ができたら顔すら見ないわけ…?

きりきりと痛む心臓を抑えるようにその紙袋をぎゅっと握りしめる。
気のせいだ。気のせいでしかないのだ。泣きそうになっているなんて、そんなの絶対にこいつのせいなんかじゃない。
ぎゅっと強くまぶたを閉じれば、目の奥がじーんと熱くなっていくのを感じる。


「お前なぁ!…なんでそんな薄着なんだよ馬鹿…っ」

作品名:Summer magic 作家名:もいっこ