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夢みる子供の物語

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結局誰の贈り物かもわからなかったおもちゃをポケットに滑り込ませた俺は、そろそろ食事も歓談もひと段落つく頃だから、ケーキを切ってもらおうかと思いながら一人でふらっとテラスへ出ていく。日が暮れかかって、昼間のうだるような暑さが和らいだ外は、シャツ一枚でちょうどいいぐらいの気温だった。いまは夏時間だから、完全に暗くなるまでにはまだ時間がある。ニューヨークの夏の夜が、俺は好きだ。ずっと明るくて雑多でにぎやかで、皆、凍てつく冬のあいだ戸外に出られなかった時間を取り戻すように外へ飛び出してくる。こんな季節に誕生日があるっていうのも、なかなかいいじゃないか。

手すりにもたれて微妙に凝っていた背筋を伸ばしたとき、下のポーチに人影が見えた。あ、と思った。イギリスだ。招待状に添えるプリーズリプライのお願いを当然のように毎年無視し続けている彼は、気分が良い年にだけ、気まぐれにプレゼントを押しつけにやってくる。そして、ケーキも食べずに帰ってしまう。

俺の誕生日が近づくと毎年、彼の体調はガタガタになるらしい。食欲不振、倦怠感に、悪夢からくる睡眠不足、その他もろもろの不調を裏付ける、墓の底から這い上がってきたような冴えない顔色。イギリスはいまだに俺の選択を認めていないし、毎年巡ってくる独立記念日に体調を崩すこともやめない。抱え込んだ痛みを自分の中で熟成させて、宝石みたいに後生大事にしまいこんで、一人で勝手にどんどん沈みこむ。誰の手の届かない、声も聞こえない場所まで。
呆れるじゃないか。普段は自分勝手に愛情みたいなものを振りかざして、それが迷走した挙句ついには人の尻に一物を突っ込んでくるような真似をしておきながら、この態度だ。彼はちょっと、歪んでいる。ちょっと、ものすごく歪んでいる。

フランスいわく「あいつのあれはさぁ、半分趣味なんだよ」なんだそうだ。俺は眉をひそめざるを得ない。
「あのろくでもない懐古癖がかい。ずいぶんな趣味だね。感覚を疑うよ」
「まぁさ、二百年前は趣味でもなかったんだろうけど、今はな、不可抗力の趣味みたいなもんだよ。好きでやってるなんて本人は一ミリも思っちゃないだろうけどな。世の中にはさ、そういう確認作業が必要な面倒くさい奴もいんのよ。だから気にしないで、あぁまた五月病か……ぐらいに思って軽く流しとけ。何もお前が傷つくこたーない」
作品名:夢みる子供の物語 作家名:haru