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夢みる子供の物語

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今になって、思う。あのとき何の色も付いていなかったまっさらな俺は、彼が内側に抱え持っていた、むきだしのとがった孤独に素直によりそって共鳴してしまったんじゃないだろうか。そうだね、寂しいね。一人は寂しいものだ。だから手を取り合って、強く生きていかなくちゃいけない。
本当は、孤独だったのは彼だし、寂しかったのもきっと彼だ。でも、結果として俺はそういうことを知った。知らされた。目にみえない雪のように何かが細かく降り積もって、ゼロから針が徐々にプラスにふれるように重たくなっていく、その独特の知覚。

付けっぱなしになっていたクーラーの冷風に首筋をなめられてうす目を開けた俺は、軽く身震いしながらシーツの隙間から這い出した。喉がからからに渇いて、腕の裏側がつめたくなっている。エアコンのリモコンを探してサイドテーブルの上をまさぐると、何かが伸ばした指先に当たって床に落ちた。ズボンを脱いだときにポケットから出しておいた、例の測定器だった。

そのおもちゃを拾い上げて、暗がりで液晶を撫でたときに思った。孤独の度合いっていうのはつまり、長い長い時間の中で自分以外の人のことを知り、他人といる時間の充足を知り、なおかつ一人であることにどれだけ慣れてしまったかっていうことなんじゃないだろうか。数値が大きいということは、そのぶん受け入れて、折り合って、諦めているということで。
俺はそんな仮説を立ててみて、自分の考えに自分でムッとしてしまった。自分の数値が誰よりも低かったことを思い出したからだ。あんなに愚痴三昧で執念深く、いつまでも後ろ向きなイギリスでさえ自分よりよっぽど孤独と折り合いをつけているんだとしたら、どうも腹のたつ話だった。長く生きているから?でも、そんなのはどうにもならない。なんだかずるいじゃないか。しょせん若輩者の新興国めと言われているようで、気分が悪かった。

立ち上がって庭に面した窓を開ける。生温い風がさぁっと吹き込んでくる。近所で誰かが花火にでも興じたのか、夏の夜の匂いに混じってかすかに火薬の香りがした。それは俺にとって、自由に繋がる匂いでもある。
作品名:夢みる子供の物語 作家名:haru