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傍迷惑なひたむき

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02




「なあ、新羅。離れたくても離れねえし、気づけば握っちまってた。これ病気か?」
「お願いだから説明というものをきちんと理解した上で説明してくれないかなあ、静雄!全く面白くて腹が唸るよ!あっはっはっはぅぐえぇええ!!」
「いいから診断しろ」

『し、新羅ぁあ!!』


相も変わらず僕の手をがっちり握ったままで静雄さんは新羅さんのマンションを訪ねていった。高校生と自動喧嘩人形。しかもホールド済みの手を見て、道中の人々は僕を哀れそうに見ているのがもろの視線で分かった。可哀相に、との声も聞こえてきたくらいなのである。途中臨也さんに会わなかったのが、それだけが救いだった。


新羅さんを訪ねたら訪ねたで、冒頭のようなやりとり。ボディブローを喰らった新羅さんを必死にセルティさんが慰めている。新羅さんは静雄さんに殴られてかなり痛いはずなのに、セルティさんに慰められてすごくイイ笑顔だ。


本当にタフなんだなあ、とそう思う。
僕は遠慮したい。というか出来るうるなら僕は逃げ出したい。なのに、僕を掴んでいる静雄さんがそっと指を絡めてくるから一層逃げれなかった。もうこれアウトじゃね?なんて紀田君の顔が浮かんだけど、とても嬉しそうな狩沢さんの顔が浮かんだけど、僕は必死に現実から目を離さないでいた。偉い。僕偉い。

「新羅さん、頼みます」
「おやっ帝人くん。ははあ、そういうことかあ」
『し、新羅、…ええと、まさかなのか?』
「うーんだろうねえ。静雄がねえ」
「早く言えって。竜ヶ峰も・・こま…困ってるか・・?」


ちら、と後ろを振り向いてしゅんとした顔で言われる。いやそりゃあ困ってますよ。ものすごく困ってます。でも正直に言ってしまうと、さらに落ち込むのが目に見えたから遠回しに言った。静雄さんは傷つきやすい性格をしている、優しい人なのだから。ただ自分の持つ力の所為で勘違いされやすいだけで。ああ、でもそんな非日常いいなあ。


「静雄さんにも迷惑かけますしね。新羅さん、お願いします。あれですよね。きっと最近寒いから暖を取りたいだけなんですよね」
「い、いや…俺は…迷惑なんて…」
「うわあ帝人くん必死」
『いっそ哀れだな』


同情の視線が静雄さんに集まった。静雄さんはそれに気づかないで、僕の指を絡めていた力をきゅっと強くする。いたい。


「し、静雄さん、いたい」
「あ、すまん」

そう謝ってはくれるけれど離したりはしてくれなかった。
僕は女の子と恋をしたい。静雄さんは男で、確かに格好良くて、非日常の具現化したようなものを持っていて、優しくて、あれっいいところしかない。臨也さんとは大違いだ。いやしかし臨也さんも顔がイイという点においては同性の僕も認めるしかない。性格は最低だけれども。


「で、静雄。結局君はどうしたいんだい?病気が発覚したとして、今君はその症状を治したいの?」
「え、…あ、…あぁ・・、ん、」


なんでそこで言葉を濁らすのですか?と視線で訴える。その視線を受けて、喉をひくりとさせた静雄さんがじりじり目を逸らしながら、手持ち無沙汰に僕の指を弄び始めた。絡めたり、離したり握ってみたり。何をしているのやら。僕はじーっと見つめて、思い切ってこちらから握ってみた。本当に考えも付かないでやったことだから、何の意図もない。
ただ、ああじゃれてるんだなあ・・ぐらいしか思ってなかったからだ。

「!」

それに過敏になった静雄さんが、肩を小動物のように震わせた。そして勢いよく僕の手を引っ張ると、腕の中へ僕を閉じ込める。ぎゃあああああ此処には僕と静雄さん以外がいて、お願い、こんな羞恥最悪すぎる。それにあまりに強い力で抱き寄せられているために息が苦しい。肺が圧迫されている。
そうか、窒息ってこういうことか。


「静雄さ、ん…離し、てくだ…!離…し、て…く、だ…さ…!」
「わー!静雄、だめだって!帝人くん死んじゃう!死んじゃう!」
『うわあああああ帝人君!!静雄、おちつけおちけつつつ』
「セルティ、君も落ち着いて!」


段々抵抗する力も弱くなってきて、僕はくったり静雄さんに身を任せるように寄りかかる形になっていく。子供が大事な人形を離さないように、僕を抱き締めては嫌々と首を振る静雄さんにセルティさんも新羅さんも混乱して、早く離すよう言ってくれる。僕はなんて無力なんだろうなあ。というか相手が静雄さんて勝ち目ないよね。
遠い目をして意識が遠くなるのを静かに待とうと思った。


「いいのかい、静雄!帝人くんは君じゃないんだから窒息するとたやすく死んでしまうんだよ!ただでさえ帝人君、細いんだから」
「!!」

細くて悪かったな、あなたも充分細いでしょうと新羅さんの余計な言葉に思い切り反抗したかった。だが、その言葉が実を成したのか、静雄さんはばっと勢いよく僕の体を離して、帝人!、と声をかける。真っ青な静雄さんのそれに咽せたままの僕は応えることができなくて、ただ咳をしながら静雄さんを見つめた。途端、真っ赤になる静雄さんの顔。だめだ、これはもうだめなんだ。僕の人権たぶんこの瞬間から消滅したな。何となくそんな気がした。

そして、その次に余計な言葉がやはり新羅さんの口から出ることになる。


「大事にしないと、ころっといっちゃうよ!!」


この言葉を聞いた静雄さんの顔の悲愴なことといったら。
そして、この瞬間決意したらしい。
恐らく、僕にとって周りにとってものすごく迷惑な、けれどひたむきなんだろう、その言葉通りに従った静雄さんのありかたってやつを。

作品名:傍迷惑なひたむき 作家名:高良