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傍迷惑なひたむき

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03




僕はその後、ショックを受けたような静雄さんを放置して帰宅。
いつもどおりの学校生活を満喫していたところ、やはり突然に、必然に、イレギュラーは訪れる。だからイレギュラーっていうんだろうけれど。

「おーい、帝人。お迎えが来てるぞ。最高に怖くて最強で近づきたくない人間トップツー。おまえ俺が言ってた注意無視しやがってばっきゃろー」


「帝人、危ないから迎えに来たぞ」


「うおわ!静雄さん、俺ちゃんと帝人を校門まで連れて行くって・・いや、なんでもないです」


紀田君の言葉が、まず日常を打ち砕いた。その次にひょっこり顔を出したバーテンダーの金髪の男が僕の学校の平凡な生活を粉砕し、嬉しそうに僕の名前を呼んだ声が周囲の視線を僕に集めた。なんということでしょう。まさしく昨日までの普通だった僕のスクールライフ・ビフォーアフター。アフターの方が圧倒的に悪化しているが、残念ながらリターンは出来ない。どうしろっていうのだ。

「な、な、ん」
「新羅が、大事にしないとおまえすぐ死んじまうって。そんなの大変だろ。だから迎えに来た。帰るぞ」
「えええええええ」

ちらっと周りを見ると一斉に逸らされる視線。心なしか、廊下にいたはずの担任でさえ姿を消していた。帰ろう、と僕を促すその声が静かな教室中に響き渡る。いまだかつてこのクラスが放課後にここまで静かだった時があったろうか。ましてやまだ帰宅した生徒が少ない中で。

「ほ、ほぉらあ。帝人ォ、俺と杏里のことならいいからさ。静雄さん、お前には危害くわえないって言ったし」
「いつの間に」

「いいから渡り廊下でいきなり静雄さんに腕を掴まれた俺の身を案じてくれよ…!ちょうこわかった」

小声でそんなことを言う紀田君がぐすりと鼻を鳴らした。本当に怖かったのだろう。まだ若干顔は青めで、僕の背中に隠れるようにしている。それを見る静雄さんの目がやたら冷ややかで怖い。怖い。何度だって言う。僕も今の静雄さんは怖い。


「あ、あの、はい。帰ります。すみません。今出ます。あと静雄さん、ここはか、関係者以外は立ち入り禁止なんですよ」

「…」

おまえなんつう勇者ァアア・・!とクラス一同の視線が自分に向いたのが分かった。静雄さんは腕を組んで、おぉ、とひとつ頷く。煙草は吹かしていないみたいで、右手で頭をかくと、すまん、と謝った。変なところで素直だなこの人は。


「鞄、持ってやるよ。おら帰っぞ」

サングラスを少し上に押し上げて場違いなバーテンダーは笑った。普通にしていれば十二分に美形なのでクラスの女子のわあ、という声が聞こえる。しかし彼は確かに美形だが、それを上回るその圧倒的な力の強さで結局は人に恐れられてしまう。こんなにも優しい人なのに。動悸は甚だ理解ができないが。

悲しいことだと思う。僕がそれを羨ましいと思ってしまうのは、それがあまりに日常離れしていて刺激的なものだからだろう。本当は当人ですら嫌いなものを羨ましいと望むのは失礼かもしれない。

けれどそういう考えも含めて、静雄さんと一応友情関係を築きあげれたのだから、結局は僕は静雄さんという池袋最強が、自動喧嘩人形という平和島静雄が好きなのだと思う。それは友情的な意味で。


僕の鞄を恐れながら静雄さんに持って貰って、僕は視線という視線に見送られて校門を出た。知っている。後ろの教室で唾を飲み込みながら、僕と静雄さんを見ているクラスのみんながいるのを。どうせなら誰か一人でもいい、助け船が欲しかった。


「あの静雄さん、大事にするって…その、どういった…」
「あ?あぁ、おまえほんとに細ぇからなあ…俺が守ってやれる範囲は守ってやるよ。ダンプがいきなり三台まとめて突っ込むかもしれねえし」

それはない!と言い切りたかったが、静雄さんは体験したことがあるのだろう。あん時は痛ぇしムカツくしな…と煙草に火をつけて語っている。十中八九それは臨也さんのしでかしたことだと米神に浮かぶ青筋が物語っていた。触れるな危険。


「そうですか…ええと、僕はあのここらへんでいいですよ」
「何言ってんだ?家まで送るぞ」
「え」


西口公園までさしかかったところで控えめに遠慮を申し出ると、即座にばっさり切られる。仕方ねえなあ、という顔をして静雄さんは僕の髪をぐしゃぐしゃに撫でた。なにを考えているんだろう。理解したくても意思の疎通すら出来ない場合は一体どうしたらいいんだ。その時、計ったかのように僕のお腹が鳴った。七限目が体育だったので腹が空いていたらしい。なぜここで鳴る。


「子供が遠慮なんかすんじゃねえよ。腹でも減ったのか?そうだな、マックぐらいなら奢ってやるぞ」
「……ええっと……はい…」

今月は苦しいと財布が呻いていたから、うっかり頷いてしまった。
自分で自分を追い詰めて何が楽しいのかなあ、僕は。渇いた笑いで静雄さんに笑いかけて、今日無事に帰れますようにとセルティさんに願った。セルティさん運び屋なら静雄さんを上司の人の所へ運んでくれないかな。無理かな。

作品名:傍迷惑なひたむき 作家名:高良