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傍迷惑なひたむき

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04




竜ヶ峰帝人は、弱い。
人の強さというものは人それぞれだが、力や体力、身体面といった点では竜ヶ峰帝人は弱いと表すに充分だった。自分と比べた場合であったが、おそらく一般に比べても、彼はあまり運動に秀でているとは言えないだろう。

それに、彼は動作がどことなく小動物に似ている。あたふたと困惑する動作は落ち着きのない兎のようであるし、興味のあるものに熱心に耳を傾ける姿は子犬で、奢ってやったポテトを小さく噛んで口内に収める様子はもろに栗鼠だ。

庇護欲を存分にかきたてられる存在を守れるというのなら、そりゃあ進んで守る。この小動物が危険にさらされるなんて見たくない。ただの他人ならばよかったが、もう既に深く関わってしまったから戻れない。戻りたいとも思わない。あの存在が微笑んでくれればそれでいいし、その原因が自分ならばきっと、とても。ああ、そういやこんな感情なんていうんだっけか。久しぶりすぎてよく分からない。誰かを思って感情が、誰かが害されていれば感情が爆発してしまうくらい、荒ぶりの高い。それは。

傍にいなければ、一層寂しく。姿を見れば声をかけたくて。
届かなければ、もどかしく。羞恥に震えるあの小さな体を愛でてやりたい。
甘い匂いのする体を貪って、跡すら残さぬように。
断片的な感情ひとつひとつが、とても重い。


言葉にするのは簡単なようで、難しい。
暴れ出している言葉と感情を結びつけてしまえば、認めてしまえば。
何が変わるのか。何かが変えられるのか。

おい、聞いてっか。
竜ヶ峰帝人、あいつは俺にとってどんなんだよ。




来良の校門前、いつものように静雄さんが迎えに来る前に校門に出る。

「…静雄さん?」

煙草をくわえたまま動かない静雄さんを見かけた。自動販売機の隣でサングラスの奥、伏せた目が静雄さんが思案に耽っていると言っている。やがて口が開き、紫煙を揺らめかせるとそこで静雄さんが目を開ける。うっすら開かれた色素の薄い眼球が僕をとらえた。

「…あ?」

僕がいることが不思議に思ったのだろう。ふと洩れた声は疑問を帯びている。

「竜ヶ峰」

声が煙で掠れ、その声は低い。は、と息をついた静雄さんはゆっくり手を伸ばし、僕の頬を撫でる。その撫で方がとても。

「…ひ、」

「竜ヶ峰、…今日は、怪我しなかったか」

大きな手が喉を撫でる。鼻を、耳を、髪を、唇を。
何かを確かめるような、何かを見つけるようなさわり方で触れてくる。なぜだろう。肌が泡立って仕方ない。ぞくりとする背筋に自分がぞくっとした。なんで、いやいや。僕はノーマルだから。ないない。
僕はやんわり静雄さんの手を離して、大丈夫ですよ、と声をかけた。


「あの静雄さん、確かに池袋は危険がいっぱいですけれど静雄さんの時間を使ってまで守ってもらわなくていいんですよ。僕、一応男なんですから」

「なよっちいじゃねぇか」

「……」


嫌みか、と思ったが事実そうなので上手く言い返せない。眉を寄せて少しだけふくれた。自分と比べるのはやめてほしい。まず静雄さん自体が論外なのだから。

「確かに!そうですけど!そもそも静雄さんと比べたら、みんな僕みたいですよ?」
「お前はちげぇんだよ」
「それって嫌みですか…!嫌みなんですね…そ、それは僕は確かに・・運動は得意じゃありませんが」
「ちげぇ」
「・・?」
「他とおまえ、俺にとっては違ぇんだよ」


煙草を携帯灰皿に入れた静雄さんがじっとこちらを見てくる。
本能で感じたこと、それはきっとこの目を見てはならないということ。そうなったが最後、僕は食べられる。どうしよう。どうしよう。誰か上手い具合に通りかかってはくれないだろうか。というか近い将来、僕はきっと食べられる。現に僕はただでさえ押され気味だというのに。いや、諦めたらだめだろう。駄目なんだ。駄目だ。


「…そ、・・そう、ですか」

誰か、上手い言い訳を。



「ちょ、あのバカップルどうしようか。セルティ」
『いいから邪魔するな!今いいところなんだ!』



作品名:傍迷惑なひたむき 作家名:高良