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フロワード先生とシオンくん



「先生」
 とこの子供は実に綺麗に笑んで見せる。自分と同じ類の笑みだ。
 本能でどういう表情が自分にとってプラスに働くかを知っている。
「僕の親友のことで相談があるんです」
 子供らしい柔らかな口調、声音。どこまでも演じることに慣れて
いるらしい。
「あいつ、先生の授業だけじゃなくて全教科寝てるんだけど……出
席点だけで単位認定ってやっぱり難しいですか?」
 シオン・アスタールの親友=ライナ・リュート。
 学年最下位、辛うじて授業に出ているものの授業時間=睡眠時間
に充てている問題児。
 フロワードは頭の中で簡単な情報を引っ張り出す。
 そして困ったように笑う子供に対して、何の感慨も抱かぬ声音で
返答した。
「そうやって、君が教師全員に頭を下げて何の得になるんです?」
 シオンは何の反応も返さない。ただ綺麗に微笑み続けるだけだ。


<章=あいしてる>
(ライナとシオン)

「愛してるよ」と言葉とは掛け離れた表情でシオンが言う。
 こいつはいつも同じ顔で同じことを言う。初めから冗談だと分か
らせるそんな顔で。
 だから誰も真に受けずに戯言だと受け流す、冗談だとあしらう。
 だがもしここで、こちらがより真摯な声音で愛を紡いだらどうす
るつもりなのだろう。
 いつもからかわれることに対する仕返しの意味も込めて、ライナ
はへの字に結んだ口元を緩めようとして――浅く息を吸い込んだだ
けだった。
 愛なんて言葉、重々しくて口にできなかった。
 代わりの言葉も見つからない。だから結局、いつものように「へ
いへい」と聞き流す。
 否定の言葉を見つけようとしなかったのは、それを探す手間すら
面倒だったから。そう思いたかった。



「愛してるよ」呼吸と同じようにすんなりと吐き出す。
 ライナは一瞬だけ黒曜の瞳を揺らめかせ、すっとこちらに焦点を
合わせた。
 こちらとは違った拍で繰り返される呼吸。ほんの少しだけ口元が
動く。でも何も言わない。
 何かが返ってくるなんて初めから思っていない。
 だから言えるのだ。だから待てるのだ。
 宛のない囁きと期待できない回答。
 それら二つがなければ、こんな穏やかな気持ちで吐露できるはず
がない。
 自分でもあやふやな規定の感情等。