【東方】東方遊神記12
「ふぅ・・・今日は色々話して疲れたわね。久しぶりに二人でゆっくりお酒でも飲みましょうよ」
外交モード・・・といっても普段とあまり変わりはないが、とにかくそれを解除した御影は、う~ん、と背伸びをしながら美理に言った。
「御影・・・」
「うん?何?もしかしておごってくれるのかしら?」
説明しておくと、天狗の里にはしっかりとした料理屋はないが、一軒だけ飲み物屋がある。ここでは酒も結構な種類があるのだが、食べ物は一切ない。人間の居酒屋から考えれば信じられないことだが、そもそも前述の通り口に入る物も嗜好品の一つなので、天狗たちにすればごく普通のことである。御影は食べ物も扱ってほしいと思っているが、命令はしたくないし、それが店主のやり方なら仕方ないと諦めている。そして、今日もそこに行こうと思ったわけだ。
「決めたわ・・・私、椛について行く」
「・・・は?」
・・・まぁ、言うとは思ったけど。
「大丈夫よ、何も一緒に行こうというわけではないわ。気付かれないように後からついていって、椛が対処できないようなことが起きた時だけ、ばれない様に助けるのよ。それなら問題ないでしょ」
美理はさも名案というように手を叩いた。それを見た御影は心底あきれたというように、はぁ~と溜息をついた。
「美理・・・あなたいい加減にしなさいよ。そんなのだめに決まってるでしょ」
「何で?まさか私がばれるようなヘマをすると思っているの?」
「そういう問題じゃない。あなた諏訪子様に言われたこと何にも理解してないじゃないの」「わかっているわよ。必要以上に過保護にするなってことでしょ?だから、気付かれないように隠れてついて行くと言っているじゃない」
影から見守ることも十分過保護だと思うが。でも、妖怪たちの地底に対する基本的な認識を考えれば、美理が心配するのも無理はないのか。なにしろ目に入れても痛くないほど可愛がっている・・・まぁ公的な場所では自重しているが、それでも大事な大事な椛のことである。それに、これはなにも美理の個人的な執着だけが問題ではない。
「私は楓(かえで)殿に約束・・・いや、誓いを立てたのよ。これでもし椛に何かあったら、楓殿に申し訳が立たない」
「美理・・・」
作品名:【東方】東方遊神記12 作家名:マルナ・シアス