日の下で眠る
数ヵ月後、毛利軍率いる海軍が長曾我部軍を襲った。豊臣軍を伴って。毛利・豊臣軍が優勢なのは明らかだった。海上、地上の両方が同時に攻められる長曾我部軍。海上では毛利軍と苦戦を強いられ、地上では豊臣が力により四国の有名なカラクリも一つ、また一つと破壊されていく。この様子を船上で眺める二つの影があった。豊臣軍の軍師、竹中半兵衛と毛利元就だ。一人は満足そうに、もう一人は何の感情も示さずにいた。
「いいのかい、毛利君。一時でも同盟を組み、九州を制圧したんだろう?」
「ふん、構わぬ。要らぬ駒は切り捨てるまで。」
戦場であるにも関わらず、彼らの周りは静かに感じられる。そこに一人の兵士が入り、長曾我部軍最後のカラクリが破壊できたと告げた。
「さすがは毛利軍だね。僕が思った以上に早く事が済みそうだ」
「当然だ」
短く答えると、元就は嬉しそうに目を細めている半兵衛に背中を向けた。
「長曾我部は我が討つ」
「へぇ。頼もしいね。それじゃあ僕は君のお手並みを拝見させてもらう事にしよう」
そう言って半兵衛は元就を見送った。元就の姿が見えなくなると、彼はその場に留まっていた兵に告げた。
「すぐに地上の長曾我部軍を包囲するんだ。くれぐれも毛利軍の船を陸に近づけさせないようにね。」
命令を告げられた兵は返事をすると、一礼してから駆けた。そうして半兵衛はこの場に一人残った。
「ふふ・・・もうすぐ西は豊臣の手に入る。思ったよりも早く・・・ケホッ、ケホッ」
言葉を紡ぐ半兵衛が口元を押さえ、咳をした。咳が収まると、彼は自身の口を押さえていた手を見る。そこには血が数滴付いていた。
「でもまだだ。まだ秀吉の天下になったわけじゃない。一刻でも早く、天下を秀吉のものにするんだ・・・・っ!」