二次創作小説やBL小説が読める!投稿できる!二次小説投稿コミュニティ!

オリジナル小説 https://novelist.jp/ | 官能小説 https://r18.novelist.jp/
二次創作小説投稿サイト「2.novelist.jp」

ぶりたにあ・えんじぇう☆★

INDEX|10ページ/11ページ|

次のページ前のページ
 

Another.小ネタ集



1.静雄+帝人+セルティ



  なるほど、これが天国か。

 池袋の喧嘩人形こと、平和島静雄は、呆けた頭と緩んだ表情筋を引き締めようとせず、そう思った。
今、彼は望んだままの、平穏で、静かで、普遍的な日常とも言うべき事柄の真っ只中に居た。
否、状況としては有り得ない事尽くしで寧ろ非日常なのだが、和やかに流れて行く時の前にして、無粋な感情など差し挟みたくはないと、余計な思考を追い払った。

「どぉ~ は ドーナツぅ~ のぉ~ どぉ~ れぇ~ は レモンの れぇ~…」

楽しそうに歌う、甘く高い声は幼児である帝人のものである。
キャッキャッとはしゃぎながらリズムを取るその場所は、静雄の膝の上だ。
夜からの仕事が多い為、比較的静雄は昼間が空いている場合が多い。
反対に臨也は昼間に活動している事もある為、今の所彼等が鉢合わせる事態は幸いな事に起こっていなかった。
それまでは適当な時間まで寝て、家でぼぅっとし、仕事の時間少し前に家を出て、時折暇潰しに池袋を散策する、と言う無為な時間の過ごし方をしていた静雄だったが、帝人が岸谷家に預けられてからと言うもの、時間の許す限り訪問するようになっており、比例して、帝人の懐き度も上がって行った。
本日も、静雄の来訪に大層喜んだ帝人は、静雄がソファに腰掛けるなり膝に乗り上げ、ベッタリくっついて機嫌が好さそうだ。

「みぃ~ は みぃ~かどぉ~ のぉ~ みぃ~ ふぁ~ は ファイトの ふぁ~・・・」

その歌詞に、思わず静雄は噴き出してしまう。
ピタリと歌う事を止めた帝人は、不思議そうに静雄を見上げた。

「しじゅにいちゃ?」

くるりと目を瞬かせて見上げる帝人の目は純粋さに満ちている。
静雄同様にツボに入ったらしいセルティも肩を震わせていたが、PDAに文字を打つと帝人に見せてやる。

『帝人は歌が上手だな。その歌詞は帝人が考えたのか?』

わしゃわしゃと遠慮無しに頭を撫でられ、帝人の顔が綻ぶ。
褒められて嬉しい帝人は、近寄って来たセルティにも抱き付き、エヘヘと笑った。

「きくしゃまやほかのみなしゃまにおしえてもらったの。ぼくのなまえが"みかど"だから、みんなのぶぶんは"みかど"にかえてうたえばいいって。」

へんだった?、と首を傾げて不安そうに問う幼子に、『気にするな。変じゃない。』、と返したセルティは、帝人を挟むようにして静雄と3人でソファに腰掛ける。
右手に静雄、左手にセルティと挟まれた帝人は、大きな目でジッと交互に2人を見遣り、ニパッ、と微笑んだ。

「しじゅにいちゃとせるてぃおねえちゃん、ぼくの3にんで、かぞくみたいです。」

そして、爆弾を投下。
静雄は飲んでいたコーヒーを危うく噴き出しそうになり、セルティは思い切り動揺した。
ここに新羅が居なくて良かったと、セルティはその奇跡に安堵する。
彼はタイミングの良い事に、急患で出ていて帰宅は夜になるとの事であった。
2人のおかしな様子に、キュッと眉を寄せて帝人は首を傾げる。

「・・・やっぱり、ぼくへんなこといった?」

シュン、と肩を落とす帝人に、今度は大人2人が慌てる。
高校生の帝人の悲壮さや痛ましさを感じさせる雰囲気も辛いだろうが、これが幼児となれば、破壊力はいや増す。
このまま泣いてしまうのではないかと焦った静雄は帝人の身体を抱き上げると、目一杯手加減して帝人の身体を上に放り投げた。

「ふわぁっ!」

ふわりと、帝人の身体が宙に浮く。
俗に言う、高い高いである。
無重力状態を体験する帝人は、先程のショックも忘れて、頬を興奮に赤らめた。
落ちて来た帝人を、しっかりと静雄が抱き止める。そうして瞳を覗き込み、静雄は自然に優しい表情を浮かべた。

「竜ヶ峰が俺と家族になってくれんのは嬉しいが・・・セルティは、新羅の家族だからな。相手がちょっと違う。」

その違いを幼児に説いた所で理解などする筈もないだろうが、静雄の言葉に、彼と、セルティの顔を見た帝人は、コクリと頷いた。

「うん。わかった。」

でもね、と、帝人は静雄のシャツをキュッ、と左手で掴み、セルティに向かって右手を伸ばす。

「しじゅにいちゃとせるてぃおねえちゃんが、ぼくのだいすきなおにいちゃんとおねえちゃんだってことは、かわらないんだよ。」

天使のような笑顔で言い切った帝人は、静雄の首に腕を回して抱きつく。
喜びに打ち震える静雄は、歓喜のあまり加減が利かなくなりそうな自身の力加減を妬ましく思いながら、どうにかして力を抜いて帝人を抱き締められないものかと奮闘したのであった。