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いつまでも醒めない夢を見ている

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 けれど、もし言ってしまえば。運命が動き出してしまう。
(だいじょうぶ。こわくない。オトヒメ、エヒメのオトヒメ。オトヒメ、エヒメいるよ)
 私のおびえを知って、姉姫が、優しくなだめてくれる。ふれた所だけがこの世で唯一、確かなもののようだ。この世ならぬ、大きな霊力と引き替えに、わたくしは、
(ずっと、いっしょよ。やくそく、よ)

 まもるわ。私が、エヒメをまもるの。たった一人きり、血を分けた姉妹。この世にもうひとりの自分。運命が身体を分けてしまったけれど、元は母の胎の中で生まれたひとつの命だったのに。生まれてこなければ良かった。私など、生まれなければ良かったのだ。
 何故私たちを二人にしたの。見たこともない、しかし、あざらかな記憶の中の母親。禁じられた恋に憑かれ、やがては狂乱に果てた女。おびえるままに、予言を吐いた。殺せ、と叫んだ女。
 先の佐保の巫女姫が憎い。その予言に憑かれたような佐保の族すら憎い。私から、愛しい姉姫を奪い去ろうとする。殺そうとしている。
 ダメ。オトヒメ、だめ。私の憎しみの心をいさめるように、姉姫が優しく抱きしめてくれる。ええ、そうよ、姉姫。あなたがいれば、私の滾る心は、穏やかになる。私は姉姫をまもるために強くなる。この力の全てを、姉姫の為に注ぐわ。
 わたくしは、たまらず、大きな声をあげた。
 外ではあの重い雲から雨がしたたか落ち始めていた。雨が屋根を叩く音が激しく、まるで泣くわたくしのこころに共鳴しているかのようだった。
「もうすぐカミナリがおちて…」

 
 半刻ほど後、長老たちが駆けつけた。長老たちの興奮した顔に、わたくしはこのまま姉姫が殺されてしまうのではないかとばかりにおびえ、姉姫にしがみついた。何があっても姉姫を殺させたりしない。
 ころさないで、とわたくしは長老たちに楯突いた。姉姫がいなければ、生きていけない。死んでしまう。
 当惑しきった、男たちの前で、私ははっきりと言葉を紡げないもどかしさを感じながら、わたくしはただ、殺さないで、とくりかえした。御影はなにもわからぬまま、ナカナイデ、と泣きじゃくっていた。
 その日、わたくしには大闇見戸売という名前を与えられた。佐保の、強大な霊力を持つ巫女姫。そして、姉姫には、御影と。かげ、とは光のことだ。わたくしを照らす光。穏やかな春の陽射しのように、わたくしを照らし続けていて。