裏密ロマンス
しかし、さすが菩薩眼と呼ばれる女だ。オレや京一のように鍛練を積んだ訳でもないのにあそこまでやるとはな・・・。どうする、裏密。オレと美里はそう簡単にはおとせないゼ…………。
だが、裏密は最大のジョーカーを手にしていたのだ!
「龍麻〜この前ほしがってた〜媚薬〜。手に入ったよ〜」
ぎくぅ!!!!!!
裏密の言葉はまさにその膠着した場を打ち砕いた。
美里の髪が逆立つ。
ぎゃわー!こえーよー!!!!
「緋勇くん…………」
ゆらりと美里の背後で影が揺らめく。
やばい、あれは!
「媚薬って、なにかしら?」
本人は微笑んだつもりなのだろうが、オレには般若にしか見えなかった・・・・。誰だよ! こんなやつをマドンナなんて言ったのは!!!!
カッと双眸が怪しい光を放った。
スタンド『ジェラシー』だ!
あばばばばばッ殺されるぅううう!
その瞬間オレは死を覚悟した。
ああ、母ちゃん、親孝行もできないまま先立つ不幸をお許し下さい!
だが、美里のスタンド(もといジハード?)は発動寸前でビリッと電撃に触れたように立ち尽くした。
一体何がおこったのかわからなかったけど、どうやら一命は取り留めたようだ。
美里のスタンドはナリを潜めていた。
「眉間にある〜第三の目を〜封じたから〜もう大丈夫よ〜」
はっ! しまった!
美里の額に呪符が張られている。
「これで〜貸しひとつね〜?」
ぐったりと力を失った美里を支えながら裏密はにっこりわらった。
「龍麻も〜、もちろん手伝ってくれるよね〜」
はい、もうあなたには逆らえません。
そしてところ変わって如月骨董店。
その店主である如月翡翠は眉をひそめてオレに抗議の耳打ちをした。
「一体今日はなんです?あなたたちがくると商売にならないんですよ!!」
しかも裏密を伴っての来店ではますます商売にならない。
「・・・・いつ来ても客なんていねえじゃん」
「失礼なこと言わないで下さい! 来ますよ、客くらい」
ふむ、意外なことではある。
まあそうでもなきゃ食っていけねえしな。
そしてオレはちらりと視線を動かした。京一も小蒔も美里も、むっつりと押し黙って、その身に降り掛かった不幸を嘆き悲しんでいた。裏切った醍醐だけがその難を逃れているつもりであろうが、そんなことはオレが許さねえし、皆も黙っちゃいないだろう。