裏密ロマンス
後でボコってやる。
しかし今はこの難を乗り切らねばならない。
そしてとうの裏密。
彼女は店の物を物色してはいるがどうもそわそわして落ち着かない様子である。
「なにしてんだ? 裏密」
聞きたくもないけどな。
「う〜ん、まだかな〜」
「なにが」
「いつもなら〜もう来てもおかしくないんだけどな〜」
裏密らしくもない、イマイチはっきりしないものの言い様だ。
「だから誰が?」
そして裏密はぽッと頬を赤く染めた。
「まさかおまえの好きだって言う人か!?」
「なに!?」
「なんだと!!」
さっきまで死んだ魚のような濁った目をしていたものたちが、急に生気を取り戻したかのように瞳をらんらんと輝かせ前のめりになった。
如月でさえ目の色を変えている。
以外とミーハーだったのな…………
「あ〜来た〜」
裏密の言葉に全員が戸口にへばりつく。
そして、
「あら」
「へっ?」
「ほう」
「まさか」
「あれかよ…………」
口々についてではのは感嘆の言葉。
そして空白の間。
・・・・・だめだ、絶ッッッッッ対無理!!
渦中の人は自分の命がまるで風前の灯より危うい位置までいってることに気がついてもない、軽やかな足取りで店の前を通り過ぎていった。
「裏密」
「ミサちゃん」
「ミサ」
「裏密さん」
皆が、もちろんオレも含めて同一の意見に達したようだ。肩にポンと手を置く。
「あきらめろ」
◯◯高校3年2組、御堂和馬。
都立ながらランクは上。
成績優秀、眉目秀麗、冷静沈着、雨あられ。
生徒会長をつとめ、生徒から多くの支持もあり、先生からの信も篤い。
まあ、データだけ見てもここまで完璧な人間はまずいないだろう。
そして眉目秀麗は今確かめた。
そこからどう計算しても・・・この恋が成就することはまずあるまい。
しかし、裏密はおおいにやる気に満ちていたのだ。残念ながらな。
「ミサちゃんのプラーナと、彼のプラーナが一つになったとき〜この世はすべてミサちゃんのものになるのよ〜」
うっとりと水晶玉に魅入っている裏密を見て、オレはどんなことをしてでもそれを阻止すると心に誓った。だが、京一も小蒔も美里も、今や裏密のしもべに近い状態であるのに、一体どうしたらそれを阻止できるだろう。見当すらつかなかった。
かくして第一次ブリティッシュ作戦(?)が決行された。