裏密ロマンス
という小蒔の声。しかし流石といおうか裏密の行動は素早かった。えい、と気合いを込めて呪符を投げ打った。白い鳥はたちまち燃え上がり、手紙はヒラヒラと舞い落ちてゆく。
「ふはははははは!」
しかしその手紙は裏密の手に戻ることなく、奇怪な笑いとともに現れたひとりの男の手に落ちた。
「御門!!!」
例の、陰陽師のカッコした御門が扇子を手に高笑いしながら立っていた。
裏密はすかさず戦闘体勢にはいる。ただでさえ邪魔されて気が立っているところに大嫌いな男が現れたのだ。しかも、この男は少なからず自分に好意を持っているのだからますます気に障る。
「京極堂からの電波を受けてはるばる京都から舞い戻ってみれば、これはよいところに通りかかりました!」
・・・京極堂ってダレ?
「そ〜れ〜がど〜したの〜! 邪魔すると〜許さないわよ〜!!」
「魔女は純潔を失えばその魔力さえも失う。その能力を相応しい血筋に残すことは力あるものの義務だというのに、貴女ほどのものが、なんと愚かなことをしているのです! そんな愚行をみすみす行なわせるほど私は甘くありませんよ!!」
「う〜る〜さ〜い〜!!!!」
御門が言い終わる前に裏密はオルムズドの光の粉を放っていた。
七色の光を散らしながら御門に襲い掛かる!
が、裏密! それを外でやるなと言っておろうが!!!
風にのって粉は辺りを襲う。直撃を受けて美里がひざをついた。そしてその後方を歩いていた一般市民をも巻き込んだのだ。
遠くで叫び声が…………。
「よろしい、聞き入れぬと言うなら力ずくまで!!」
聞いてませんね?アナタ達は?
「くらえ!」
御門の手から放たれた十二の符から十二神将が召喚された。
どかぁあん!
そのへん一帯(もちろん如月骨董店もろとも)が燃え上がる。
「ぎゃわー! 僕の店がー!」
如月の嘆きも二人には聞こえまい。
二人は中点を中心にしてジリジリと間合いをつめた。
そして先に動いたのは御門だった。
「芙蓉・召還!」
人型の紙を放ち御門が念じると、たちまちそれは燃え上がり炎は芙蓉の体を形作る。
「お呼びですか、晴明さま…………」
「芙蓉、いきますよ! 陰陽符術・十二神将!!」
再び爆音。
今度という今度は如月骨董店は粉々に砕け散った。
「あはははははは」
如月の空しい笑いが涙をさそう。オレたちはそっと涙を拭った。