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籠を発つ鳥

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「…アルフォンス」
「なぁに?」
「すごく、嬉しそう」
短くなった髪を櫛で梳きながら、彼女が小さく笑う。
「そうかな?」
「嬉しくない人が、そんな顔はしないと思うわよ?」
いつの間にか、僕は微笑っていた。
「なんだか…すごく気持ちが軽くなった気がして」
「気持ちが?」
「うん。───いや、軽くなったって言うか、浮ついてきてるのかな」
これに似た感覚を、僕は一度経験している。
「僕が、リィ達と初めて会ったときみたいだ」
僕の世界が変わった日に感じた、あの高揚感。
「何か、新しいことが始まるんだって。すごく楽しみな、どきどきした感じがする」
「どきどきした感じ?」
「うん」
頷いた僕を、彼女は眩しいものを見るように目を細めて見た。



「顔に付いてる髪、取るから」
「うん、わかった」
目を閉じるように促されて。
ふわふわした柔らかい筆で、目元や鼻筋に残る切り落とした髪をはたはたと払われる。
「───ねえ、アルフォンス。ちょっとだけそのまま、目を閉じてて」
言われておとなしく目を閉じていた僕の顔に、影が落ちる。
なんだろう、と思う間もなく。
「…そうやってずっと、あたしの傍で笑ってて」
小さなささやきと、ふわりと唇に重ねられたやわらかいもの。



「───あんたが好きよ、アルフォンス」




触れるだけの、拙くて甘い感触。
二人分の足音が廊下に響き始めるまで、僕らはそうして、幼い最初のキスを重ねていた。



作品名:籠を発つ鳥 作家名:新澤やひろ