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籠を発つ鳥

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「───アルフォンスさんの生きて歩いていく道だから、ボク達が前に立って、手を引っ張っていくわけにはいかないけど」
拭っても拭っても、涙がぽたぽた落ちてくる。
「ボクも兄さんも、ラッセルもフレッチャーも、ウィンリィも。みんな、アルフォンスさんの傍にいますから」
「…ルフォンス、くん……っ」
後ろから伸ばされたアルフォンスくんの腕が、エドワードさんごと僕を抱きしめる。
「オマエがもしひっくり返りそうになったら、背中支えるし。すっ転んじまったら、立ち上がれるまで待ってる。迷った時には、相談してくれればいい」
アルフォンスくんの言葉を継いだエドワードさんの、名前を呼びたいのに。
「う…っく、え……っ」
ああだめだ、嗚咽で言葉にならないよ。
「オマエが疲れたときには、ラッセルとフレッチャーが薬湯を作ってくれる。…ああ、ウィンリィならきっと、歌もうたってくれるぜ」
指折るように、みんなの名前を挙げて。
「オレとアルで、バカみたいに楽しい話するから、いっぱい笑って、休んでさ。……そうして、もう一回歩き始めればいいんだ」
泣くなよ、とは言わずに。
慣れた調子で、袖口でぐいっと僕の頬を拭ってくれる。
きっとこの人は、アルフォンスくんの涙もこんな風に拭ってるんだ。
生涯知ることはないと思っていた「兄さん」の仕草に、また涙が溢れてくる。
「お節介かもしんねぇけどさ。…オレ達みんな、アルフォンスがだいすきだから」
オマエがしあわせになれるように、できることはしたいんだ。
エドワードさんはそう言って、僕をまた抱きしめてくれた。




「───あーっ!ちょっと二人とも!アルフォンスに何してるのよ!」
兄弟の間でサンドイッチになってる僕を、部屋にやってきたウィンリィが見とがめる。
「何って…なあ、アル?」
「うん。ボクと兄さんで、アルフォンスさんのこと口説いてたんだよねー」
「なぁんですってぇ?」
たたっと走って近づいてきたウィンリィは、僕を二人から引きはがした。
「アルフォンスはあたしのよ!あんた達になんかあげないわよ!」
「わ、えっと、ウィンリィ!?」
立ったままの彼女にぎゅうっと抱きしめられて、僕は椅子に座ったまま狼狽えた。
位置的に、僕は彼女の胸に思いっきり顔を埋めていることになるのだ。
服越しのふっくらした感触に、顔が熱くなっていくのが解る。
「苛めたりしてないでしょうね?タダじゃおかないわよ」
「そんなことしないよ。ボク達、アルフォンスさんの為にならないことはしないもん。ねぇ兄さん?」
「おう。…それよりウィンリィ、アルフォンス窒息しちまうぞ」
「え?……あ」
耳まで真っ赤になってしまった僕を、彼女が漸く解放する。
「ご、ごめんアルフォンス。苦しかった?」
「…ううん、大丈夫」
赤くなったのは苦しかったからじゃなくて、温かくて柔らかい感触に照れてしまったからだ。
びっくりしたおかげで涙は止まったけど、当然泣いていた跡はごまかせない。
「…泣いてたの?」
「あ、うん。ちょっと…」
「ああ、目が真っ赤になってるじゃない。…ホントに苛められたんじゃないのよね?」
「「ウィンリィ!」」
「違うよ、ウィンリィ」
思わずユニゾンで叫んだエドワードさん達のためにも、僕ははっきり頷いてみせた。



作品名:籠を発つ鳥 作家名:新澤やひろ