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籠を発つ鳥

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5.











体術を習うことにしたのは、護身と体力強化を兼ねたものだったけれど。
「「───ええっ!?」」
すっとんきょうな二つの声が、温室の中に響く。
「…ヘンかな?」
「いえ、ヘンじゃないですけど…」
とまどうような表情を浮かべたのは、僕よりひとつ年下のフレッチャー。
「ヘンではない、けどな…」
雑草を抜きながら首を傾げたのは、フレッチャーの兄で僕と同い年のラッセル。
「おまえくらいの爵位を持ってるヤツが、わざわざ剣を習うなんて」


どちらかといえば『自分の身は護衛に守らせる』人間の方が多いから、本格的に剣を扱える貴族というのは意外に多くない。
嗜む程度に習う、くらいにしか考えてないから、腰に差してる剣はただの飾り、っていう貴族もたくさんいるのだ。
比較的平和に過ごすことができている、この国だからこそ可能な状況だけれど、やっぱり自分の身くらいは自分で守れるようにしておきたい。
そう思って、僕が無理を言ってお願いしたのだ。
「一応、素質はありそうだって言って貰えたんだよ」
「誰に?」
「イズミ師匠に」
「えええっ、師匠が!?」
名前を挙げると、二人に思いっきり驚かれた。
イズミ師匠はエドワードさんとアルフォンスくんに体術を教えているひとで、もとは護衛隊に所属していた。
…とんでもなく強くて厳しくて、エドワードさんに言わせれば「父上より怖い」ひとらしい。
僕にしてみれば、あまり怖いっていう印象はないのだけれど。
師匠は結婚と病気が重なって引退したそうだけど、今もその技に翳りは全くない。
「そうか…師匠が言ったんだったら、素質はあるんだろうな…」
「師匠、見る目が鋭いしね…」
ラッセル達も、体術は師匠から手ほどきを受けたそうだ。


「じゃあ、剣の修行は?一人で習ってるのか?」
「ううん、アルフォンスくんと一緒。師匠に教わってるんだ」
「アルフォンス様も?」
「うん」
頷くと、フレッチャーが目を丸くする。
「ほら、どうせ習うなら、同じ流派の方がいろいろ都合がいいかなって」
「都合、って…」
「……だって僕、せっかくアルフォンスくんと似てるんだよ?同じものを学んでいれば、何かあったときに役立つかもしれないでしょう?」
顔立ちも背格好も筆跡も、おまけに雰囲気も似ているから、僕らが瞳の色をごまかしてこっそり入れ替わっても、身内以外には気づかれないだろう。
だったら、この容姿を利用しない手はない。
「影武者なんて大それたことはできないけど、場繋ぎ的にでも身代わりを勤めることは出来ると思うんだ」
不用意に触れられることさえなければ、僕は他人の前でアルフォンスくんを演じきる自信がある。
「でも、すごく大変なんじゃ…」
「ああ、それなんだけどね」
心配そうな表情を浮かべたフレッチャーに、僕はふるふると首を横に振った。
「もともと似てるから、仕草とかでは殆どっていうくらい努力はしてないんだ」
すごいね、嬉しいね、ボクら双子みたいだ!ってアルフォンスくんが言ってくれたくらい、僕らは最初から似ている部分があった。
「頑張らないといけないのは、体力づくりくらいかなぁ」
「おまえ体が弱いから、スタミナ切れるの早いもんなあ」
「そうなんだ、それが問題だよね。エドワードさんとアルフォンスくん、かなり体力あるから」
「…というか二人とも、むちゃくちゃしぶといよな……」
ゴキブリ並みに、と言いかけたラッセルが、言い過ぎだよとフレッチャーに怒られていた。



作品名:籠を発つ鳥 作家名:新澤やひろ