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籠を発つ鳥

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「…ところで、アルフォンス」
ばさばさと抜き終えた雑草を一カ所にかき集めながら、ラッセルが僕を呼ぶ。
「なに?」
「なんでおまえ、そんな楽しそうに草むしりしてるんだ?」
手元から顔を上げた僕は、きょとんとして首を傾げる。
「……二人は楽しくないの?」
「おれやフレッチャーは、薬師見習いっていう仕事としてやってる部分もあるし…」
「第一、草むしりなんて単純作業じゃないですか。あんまりこう、楽しいこととは思えないっていうか」
「そうかな?ひとくちに雑草って言っても、いろんな種類の草が生えてるし、時々ミミズとか出てくるし。面白いよ」
「そういえばアルフォンスさん、さっき素手でミミズ持ってましたね」
フレッチャー達は見慣れているんだろうけど、僕は見るのが初めてだったから、思わず掌に載せてまじまじと眺めてしまった。
うにうに動いて面白かったけど、あんまり長く持っているのもどうかと思って、また土の中に帰してやった。
「エドワード様達は、嫌がって触りたがらないんですけど」
「…だって僕、屋敷にいた時には、あんなことできなかったもん」
生まれつき体が弱かったから、僕には外で遊んだ経験なんて数えるほどしかなかった。
だからこんなふうに植物や土に触れたこともないし、何かを植えて育てたこともない。
おまけに繋がれて過ごしていた1年間は、碌に太陽の光すら浴びていないくらいだ。
「僕ね、自分が食べる野菜が、どうやってできるのかも知らなかったんだ。花瓶に生けられる花が、どんな風に成長してるのかも知らなかった」
「アルフォンス……」
「ここに来て、屋敷では出来ずにいたことをたくさんさせて貰ってる。だから、できること、できそうなことは何でもやってみたいんだ」
へへ、と笑うと、ラッセルがくしゃりと顔をゆがませた。



「───おまえさ、ほんとにエドワードの従兄弟なのか?」
「へ?」
「なんであのエドワードと血が繋がってるおまえが、こんなに良い子なんだろう」
「…え、と、ラッセル?」
「アルと従兄弟だっていうのは、顔とか言動とか見ていれば判るけど。これでエドワードと従兄弟だっていうのはちょっと信じられない」
「……?」
「エドワード様とは性格が違いすぎてる、って言いたいみたいですよ、兄さんは」
思わずきょとーん、としてしまった僕に、フレッチャーが補足をしてくれる。
「でもぼくは、エドワード様とアルフォンスさんには似てるところがあると思いますよ」
「そうなの?」
「ええ。形に見えるか見えないか、表現の方法の違いだけで、二人ともすごくやさしいんです」
「…そう、かな?」
「だって、でないと父君のことをそんな風に思ったり出来ないですよ。……アルフォンスさん、いまでも父君のこと、恨んでいないでしょう?」
「!」
言い当てられて、僕は息をのんだ。
僕達の中では一番年少であるフレッチャーが、そこまで見抜いているとは思わなかった。
「だって、父君が罰せられていないことを知ったときのアルフォンスさん、嬉しそうだったから」
「……うん」
フレッチャーの言葉に、頷いた。
「変、かな?」
「いいえ」
問いかけに、フレッチャーは首を振る。
「ぼくたちは、あなたを酷い目に遭わせた侯爵様をゆるすことはできないけど、肝心のアルフォンスさんが侯爵様を恨んでいないのなら、何も言いません」




作品名:籠を発つ鳥 作家名:新澤やひろ