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籠を発つ鳥

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1.











僕は八歳の時に病で母を喪った。
日を追う毎に彼女に似てきた僕を、あのひとが初めて抱いたのは十歳の時だ。




その夏。
避暑を兼ねてあのひとの治める領地へやってきた前の国王一家と、付き添いの典医の親子。
体が弱いことを理由に、碌に屋敷の外へも出たことのなかった僕が、初めて出会った同じ年頃の子供。
国王夫妻の子供で、僕の従兄弟にあたる兄弟と。
兄弟の幼馴染みで、典医の一人娘の少女。
彼らの持つ強烈な光に、惹かれた。
そして同じだけ、僕とよく似た彼女の蒼い瞳に、心を奪われた。


国王が領地に滞在していた十日ほどの間に、僕らはまるで生まれたときから一緒にいるかのように仲良くなった。
いたずらして怒られたのも、屋敷を出て街に降りたのも初めてで。
明日は何をしよう、どこへ行こう、と話をしながら、4人一緒に眠りについたり。
別れの日は寂しくて、みんなで肩を抱き合って泣いたりもして。


それからも三人とは、何度も手紙を交わした。
少しだけ角張った子供らしい文字の彼と、面差しと同じだけ僕と似た筆跡の彼と。
そして、やわらかく丸みを帯びた文字の彼女と。
3人分の手紙が一緒に入った、少し分厚い僕宛ての封筒が届くのが、僕は毎回とても楽しみだった。




彼らは僕にとって、初めて出来た友達だった。
だから病に弱い体質を少しでも強くして、ただもう一度、彼らに会いたい。
彼女に会って話をしたいのだ、と。
そう、あのひとに言っただけなのに。


長く病を煩って逝った母のように、自分の目の前から奪われると思ったのだろうか。
その日から僕は鎖に繋がれ、正気を失ったあのひとの腕の中に囲われた。







同じ年頃の子供よりずっと細かった体に、呪詛に似た愛を打ち込まれて。
僕が抗い叫んだのは、多分この時だけだった。
二度目からは抗うことも、泣くことすらも出来ず、無理矢理体を拓かされる痛みと恐ろしさに震えながら、ただその時間が過ぎることだけを願った。
あの日から僕は、父を父と呼ぶことが出来なくなった。



あのひとがとても母のことを愛していたのは知っていた。
僕を腕に抱きながら、彼は一度として僕を呼んだことがなかったので。
愛して愛して、本当に大切だったから、同じ面差しを持つ僕に救いと身代わりを求めたのだろう。
それほどまでに、母を喪ったことを認めたくなかったのだ。




そうして繋がれた生活が半年ほど続いただろうか。
彼らが、あのひとの狂気に気づいた。




僕はそのころ、気鬱も混ざった病で床に伏せっていた。
あのひとは僕の体調などさほど気に留めなかったから、その日も僕を寝台の上で組み敷こうとした。
いつものように衣服を乱され体が暴かれようとしたとき、突然部屋の扉が開いた。
『───侯爵さま…アルフォンスに、何を…?』


まさか彼女が、僕を訪ねてくれていたなんて。




作品名:籠を発つ鳥 作家名:新澤やひろ