籠を発つ鳥
『遅くなって、ごめんな…アルフォンス』
鉄格子の鍵が、がちゃんと音を立てて開かれる。
『ウィンリィに聞いて、なんとか急がなきゃって、思ってたのに…ごめんなさい』
足首の鎖が外される。
冷たい床の上に、蛇のように長い鎖がじゃらりと落ちた。
『思ってたより、ずっと時間がかかっちまって…本当に、ごめんな』
どうして謝るの?
二人が謝らなきゃいけないことなんて、何もないのに。
『ねえ、アルフォンスさん。ボク達ね、あなたにお願いがあるんだ』
僕に、お願い?
『うん。あなたでないと、叶えられないお願いなんだ』
僕じゃないと叶えられない願い、なんてあるのかな。
でも、二人が願うのなら、僕はなんでもするよ。
だから何でも言って。
両手をそっと取られて、僕はよろよろと立ち上がる。
二人の腕が僕の肩に回って、ぎゅう、と抱きしめられた。
思わず目を閉じる───ああ、なんて温かいんだろう。
『アルフォンス───オレ達と、一緒に生きよう』
切ることも出来ず、伸ばしたままになっている僕の長い髪を、エドワードさんが撫でてくれる。
『ここを出て、ボク達と一緒に』
───それが、さっき言ってた”僕へのお願い”?
アルフォンスくんがこくんと頷く。
『アルフォンス、だめか?』
そんなことないよ。僕はすごく嬉しい。
だけど、本当に?
僕が、二人と一緒に生きてもいいの?
『やだなぁ、当たり前じゃない』
アルフォンスくんが笑う。
『アルフォンスはオレ達の従兄弟で───大事な、友達なんだぜ?』
エドワードさんもそう言って、ふわりと笑う。
『ボクも兄さんも、ウィンリィも。アルフォンスさんが、大好きだから』
だからできるだけ、一緒にいたいんだ、と。
『───さあ、行こう』
『ウィンリィも、外で待ってるよ』
大切で大好きな、きんいろの、光。
僕は一つ頷いて───ふつりと意識を失った。