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ふざけんなぁ!! 1

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2.責任とります。




そして来良学園の入学式が始まる直前。

「あ、いた♪ おーい、正臣ぃぃぃぃぃ♪♪」

体育館に集められた生徒達が、楽しげにそれぞれが自分の席を捜して移動する中、帝人は隣組の区画で、三年ぶりに、紀田正臣の姿を見つけ、直ぐさま駆け出した。
懐かしい再会の挨拶と、約束をぶっちしてくれやがった苦情、そして現状帝人が立たされている窮地を彼に告げ、何とか力になって欲しいと願う故にだ。

なのに【キング・オブ・空気を読めない男】by静雄……が、いきなり父兄席からずかずかと生徒の屯(たむろ)う場所に大股でやってきた挙句、帝人の目の前で、がばりと土下座しやがった。

「お義兄さん初めまして。平和島静雄です。帝人を傷物にした責任をとって、彼女が十六になったら籍を入れます!!」


いつ、
誰が、
お前の兄に
なったぁぁぁぁ???



土下座したままな『バーテン男』を目の前に、己の背後に隠れてしまった帝人に振り向き、蒼白になって口パクで尋ねてくる正臣に対し、涙目になった彼女は静雄にばれないよう、ぶんぶんと首を横に振りたくった後、そっと手を合わせ、なむなむと拝むしかできなかった。



★☆★☆★


「で、帝人ぉ? 一体、何がどうなったのか、俺に順序良く言ってみ?」


入学式が緊急事態で中止になった直後、騒乱のドサクサに紛れて正臣は、帝人に黄色のパーカーを頭から被せた挙句、一年B組の教室に引っ張っていった。
そして現在、己が座っている席の真下に彼女を正座させ、偉そうに足を組み、頬杖つきながら蛇のような呆れた目をこっちに向けてくる。
ガラス窓に写った自分は、顔を彼のパーカーフードで隠し、背を丸めてうな垂れたその姿は、まるで飼い主に叱られているピカチュウみたいで情けない。


B組ではすでにHRが始まっていたが、ここの担任教師も、クラスの生徒も、マジで誰も邪魔しなかった。
それどころか皆、正臣と同じように耳をダンボにし、会話を一切聞き漏らすまいと様子を伺ってくる始末である。


そして今廊下では丁度、どすどすと恐ろしい地響きをたて、額に青い血管をぶちぶちに浮かび上がらせた金髪のバーテン男が、全速力で駆け抜けていっている。

「俺の帝人が消えたぁぁぁぁぁぁ!! 誘拐かぁぁぁ!! カツアゲかぁぁぁぁ!? うぉらあああああああああああああああああ、どぉおこぉぉだぁぁぁぁぁぁ!! 殺ス殺ス殺ス殺スぶっ殺ス………」


彼は傍迷惑にも、A組の担任らしきお爺ちゃん先生を背後に従えていた。
よれよれと胸を押さえつつ、息絶え絶えになり、必死の形相で彼の後を追いかける姿が哀れを誘う。
早く誰か止めてやれ。
でないと次の餌食はきっと、あの老教師だろう。


「大体、なんで入学式に、【平和島静雄】が帝人の父兄役で参加してんだよ?」
「……あれ、なんで正臣、静雄さんのフルネーム……」
「ブクロに住んでてあいつを知らねぇ奴なんていねぇよ。それに、静雄は五年前にここを卒業している伝説のOBだ。帝人、お前だって式の時見ただろ。校長以下、教師達の阿鼻叫喚振りをさ」

あれは帝人自身、マジでこくりと首をかしげた。
壇上に上り、新入生に入学のお祝いを述べる為、カンニングペーパーを片手にドキドキと待機していた微笑ましくも優しげな老校長は、父兄席から堂々と生徒席に乗り込んできた背の高いバーテンの姿を見つけた途端、悲鳴を上げ、口から泡を吹いて卒倒してしまった。

驚きすぎた場合心臓が止まると、よく噂話やTVネタで聞いていたけれど、現物を見るのは初めてで。
当然式場内は、パニックに陥り、騒然の嵐となった。

幸い、この学校にはAEDが備え付けてあったため、救急車が来るまで、体育と養護教諭の先生達が中心となって心臓蘇生を頑張った。
電気ショックと心臓マッサージと人工呼吸、そのトリプル処置が早かったから、きっと校長先生は助かるだろうけど、人命がかかった騒ぎのせいで、栄えある来良学園の入学式は、中止せざるをえなくなり。

生徒は各クラスに振り分けられ、簡単なオリエンテーリングを行った後に、解散という運びになったのだ。



けれど、『平和島静雄の関係者が入学しやがった』……という、緊急事態に予備知識がなかった教師達の慌てと慄きぶりは半端じゃなくて。
グラウンドに目を走らせれば現在、赤々とともる回転ランプが賑やかで、それ以外は黒白ツートンカラーのお茶目な車が、青い制服姿の拳銃を持った国家公務員を大量に引き連れて待機している。

さっき耳にした噂では、五年前の卒業式にも、池袋にあったありったけのパトカーが総動員で学園に乗り込んでいたらしいが、そんな悪夢再来を髣髴させる、厳戒態勢を今取っているのは何故だろう?

考えたくは無い。
帝人は恐る恐る上目遣いで正臣を見た。

「……凄く変わった学校だね、えへへへへへへ……」
「うん、お前が現実から逃避したくなる気持ち、俺もめっちゃ良く判る。だが、あえて言おう。帝人さぁ……、あの人が街で何て呼ばれてるか知ってっか?」

ほよっと小首を傾げる。

「金髪のバーテンさん♪」
「見たまんまじゃねーか、アホ。いいか、よく聞け。答えは『池袋最強』に『自動喧嘩人形』だ。あの人は、ヤクザも泣きながら避けて通るぐらい、この街の人間なら、絶対関っちゃいけない危ない男ナンバーワンなんだぞ。
大体、なんでてめぇ、俺との約束をぶっちしやがったんだ? 一週間前、俺、ずっと池袋の駅で待ってたのに」

途端、帝人もぷくりとほっぺを膨らませる。

「そっちが先に誹ったから言わせて貰うけど、待ち合わせに来なかったのは正臣の方じゃない。私、何度も携帯に連絡したのにさ。無視までしてくれちゃった癖に」
「待て待て、何か誤解がありそうだから確認したいが、お前、俺と再会の約束した日時を言ってみ?」
「3月28日の朝9時。バイトがあるからちょっと遅れるかもしれないって言ってたからさ、気を使って二時間も待ったよ」

「そう、マックのシフトが詰まってっから夜の9時、24時間に言い直せば21時だコンチクショー。ちなみに俺はその前日か当日に携帯を落とした。すれ違ったら悪いと思って、疲れた体に鞭打って、深夜までふらふらしながら、駅で待ってた俺が馬鹿? パソコンのチャットルームにお前こねぇし、その晩の無茶のせいでひき始めてた風邪こじらせて、貴重な残りの春休みを棒にフッタ、俺一人が悪いって言うの? 
そんで心配に胸痛めてた返礼がさ、公衆の面前で池袋最強が土下座して『お義兄さん』呼ばわりかよ。どんな羞恥プレイだ、何がお望みだ。俺まで今日からお前の巻き添えで時の人だ。さぁ吐け、どんと言え、今すぐ百字以内で論じてみやがれ」

駄目だ。
口から生まれてきたような正臣に、口下手でおとなしい帝人が勝てる訳なかった。

すれ違いは、お互いの勘違いが原因なんだと反論したい気はあっても、傍迷惑な金髪の魔人というオプションがついた時点で、彼女の負けは確定している。
きちんと身奇麗に背筋を伸ばして正座を整えると、深々と頭を下げた。

「ごめんなさい」
「……まあいい。お互い、不幸だったな……」

そう正臣が言い終わると同時に、今度は反対方向からどどどどどどと、静雄が廊下を駆け抜けていく。
作品名:ふざけんなぁ!! 1 作家名:みかる