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ふざけんなぁ!! 1

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「私、行く所がないし、お世話になってるから、せめてもの恩返しにって家事頑張っただけのに、それが全部『花嫁修業』とか『俺の為にそんなに尽くしてくれてありがとう』って……、頬赤らめて、感動に身を震わせて……」
「うんうん」
「せめて、東京に誘ってくれた正臣に連絡を取らせてってお願いしたら、『もう浮気か、今から殺してくるから、そいつ何処』って、目をギラギラさせちゃって。だから咄嗟に口からでまかせを……、正臣の事は、親の離婚で三年前に別れた双子の兄設定を振ったんだ。でないと完璧に死亡フラグ立っちゃったから」
「………うん、判った。お前の事情は大体………。で、もしお前の嘘がばれたらさ、俺ってどうなっちゃうと思う?……」


廊下をまたもや、どどどどどどどどどどと、地響きを立てて人の群れが疾走していった。
先頭はやっぱり金髪のバーテンで、彼の背後は今やA組の生徒だけではなく、その父兄もまき沿いを食って走らされているようだ。
そして担任の先生の姿が見えなくなった。
きっとどこかで行き倒れているに違いない。

「……アーメン……」


思わず指で十字を切った彼女の前で、その仕草を、己の将来だと勘違いしてくれちゃった正臣は、「……お前って、やっぱ最低……」と呟いた後、おもむろに立ち上がり、てくてくと廊下側の窓に向った。
そして、大声でこう叫びやがった。

「し・ず・おさぁぁぁぁぁん、竜ヶ峰帝人は、ここでぇぇぇぇす♪」
(ぎゃああああああああ!! ふざけんなぁぁぁぁぁぁ!!)



どどどどどどどどどどどと、地響きが聞こえてきた後、がらりと教室のドアがあいたが、そのまま扉は勢い良く吹っ飛んで消え、随分と風通しがよくなってしまった。


「帝人さぁ、自分のクラスを間違えてたみたいで。妹が迷惑かけて、ホントすいませんでした」
「はははは、ドジだなぁお前はぁ♪」

直角にお辞儀をして謝罪する正臣など、静雄は眼中になかった。
ひょいっと帝人は、教室にわざと置き忘れたGPS機能付き携帯を首にかけさせられた挙句、にこやかな彼に子供抱きにされ、そのまま隣室に運んでいかれた。


その後の彼女の運命が、とても気になったB組の生徒達とその担任は、無言でこくこくと頷きあうと、正臣を先頭に、こそっと隣のクラスを覗きに行った。

なんせ彼は結果的に、帝人のクラスメイトになる生徒達全員と、その父兄を下っ端にして、校内を走りたくって探し回ったのだ。
入学式初日から学校の構造を熟知できただろうが、こんなマラソンオリエンテーリングなんて、きっと誰一人望んでいなかっただろう。
絶対恨みを買った筈。

息を潜め、窓から室内を覗き込めば、小柄な帝人はバーテンのお膝にちまっと乗せられて、明らかに担任じゃない代打になった運の悪い教頭の話に耳を傾けていた。
溺愛ぶりが半端ねぇ。
肩を落として涙目になっている姿は、やっぱりピカチュウにそっくりで。
『先生、皆、助けて!!』と時折、彼女の熱い視線が四方八方飛び交うが、全員気がつかないフリをして目を反らしていた。



帝人には悪いが、傍から見ている分にはこんなに面白い見世物は無く、正臣達は声を殺しつつ、廊下をのた打ち回って悶絶・爆笑する羽目になったのだ。



だが、これらはまだ序の口で。

『池袋最強』『自動喧嘩人形』と謳われた彼の渾名が、『池袋爆笑』『自動お笑い捏造人形』という、些か情けなさ過ぎるものに変わったのは、それから直ぐの事。



★☆★☆★

勘違いで妄想ドリーマー兼ストーカーな静雄に、振り回される悲惨な帝人を一度書いてみたかったんです。

静雄のイメージがぶち壊されたらごめんなさい(ぺこぺこ)
今後、彼はもっともっと壊れていきます(撲殺)




作品名:ふざけんなぁ!! 1 作家名:みかる