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ふざけんなぁ!! 1

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4.不幸は続くよ、どこまでも♪  前編




帝人は、高校生になって初めての連休となる、ゴールデン・ウィークの帰省を見送った。
何故なら、金髪に髪を染めた力持ちさんが、照れた弾みで勢い良く自分を抱きしめてくれちゃったお陰で、現在自分のあばら骨は七本も折れているのだ。
流石にこんな体を親に見せられない。
ばれればきっと、二度と実家から出して貰えないだろう。

ここの骨は、人によっては、【ああ私、くしゃみした弾みでヒビが入ったって。あはははは……、いだだだだ】っていうケースだってあるぐらい、結構簡単にぽきりといく。

治療法だって、どんな名医にかかろうが結局、コルセットと湿布、後は解熱鎮痛剤を飲みながら、自然に治癒するのを待つしかない。
高熱に悩まされる事はあっても、薬を片手に静かにしていれば、普通の日常生活は送れるのが、唯一の救いだ。


責任を感じた静雄は、帝人をとても溺愛してくれて、五月の連休時に休みがかち合えば、彼の奢りで映画館をいくつもハシゴした。
ジャンプ系のアニメ映画、羽島幽平主演の『カーミラ・才蔵』シリーズ最新作、ハリウッドのSFアクション系、または格闘技物等々。
静雄の好みは自分のと概ねぴったりだったし、憧れの東京でガイド付きで安全に遊べるのだ。
体調を崩せば、逞しい腕でお家にお持ち帰りしてくれるし。
時折「デートだデート♪」と、はしゃぎ回るウザさを除けば、帝人的に安心で楽しく、しかもタダで、充実したお休みを過ごせたと言えただろう。


だが、二週間後にこんな落とし穴が待っていようとは。


情報通の正臣が、蒼白になって持ってきた、5月20日発売の【東京災時記】。
東京の色んな所謂都市伝説を検証したり、面白おかしく書く三流ゴシップ雑誌なのだが、今回池袋を特集しており、その中に『街で見かけた【お揃いのお洒落なカップル】』というコーナーあって。

バーテン姿の静雄が、明らかに彼と同じ服をワンピースに作り直したものを着ている帝人を、大切そうに腕に抱えている光景が、なんとA4サイズフルカラーで丸々一ページも使って掲載されていやがったのだ。

確かに平和島静雄は、被写体としてみれば、とても美しい男だと思う。
カメラマンの腕が疼くのだって、帝人だって認めよう。
だが、何故その相手が自分なのだ?
明らかに不釣合いだろうし、年の差を考えれば犯罪者だ(静雄が)。
あまりの節穴ぶりに、「眼科に行って、目玉取り替えて来い馬鹿野郎!!」と叫んだ帝人を責める人は誰も居ない筈。


(……どうか親達と、静雄さんの目に触れないで……)
そう、信じていない神に大いに祈ってみたりもした。
そんなドキドキと心臓を高鳴らせた晩、結局静雄が子供のようにはしゃぐ事も、実家からお叱りの電話がかかってくる事もなかったけど。

その翌日の朝、帝人は来良学園に登校すると同時に、本を片手に待ち構える先生達に捕まり、生徒指導室に連行されたのだ。
頼みの綱だった口達者な正臣は、寝坊し遅刻しやがった為、救援は間に合わず。
教頭先生を中心に、生徒指導部の六人の先生に囲まれた彼女は、開口一番にこう告げられた。

「我々も、こんな事を言いたくないんだけど。君、学校辞めてくれませんか?」

来良学園退学は、彼女にとって東京撤退を意味する。
冗談ではない。

一瞬で腹を括った彼女は、男性教師七人相手に、徹底的に抗戦したのは当然だった。


★☆★☆★

そして。

「やあ、君が竜ヶ峰帝人ちゃん? 初めまして。岸谷新羅と中学時代からの友人で、折原臨也って言います。紀田君も久しぶり♪」

正臣と校門を出た直後、顔は綺麗だけど、人相があまり宜しくない赤い目をした黒ずくめの男の人が、もう二度と見たくもない【東京災時記】最新号を片手に、にこやかに手を振っていた。



★☆★☆★



その日の晩、静雄は何時ものように幸せを満喫していた。


本日の献立は、ほかほか麦ご飯の上に紅鮭をほぐして乗せ、とろろ汁をかけたどんぶりだ。
熱々の青野菜の味噌汁、巨大鶏肉入り茶碗蒸し、はんぺんとレンコンとジャガイモの煮物に、後は色とりどりの漬物。そしてデザートは静雄の大好きなプリンのケーキが用意されている。

しかも直径26センチのサラダボールに、たっぷりと埋まった抹茶と黒糖とミルクの三段重ねのビッグサイズだ。
豪快に大皿でひっくり返せば、ホールケーキ並みの大きさになる。
それを四等分にカットしても、量が見るからに半端ではなかった。

(あー、俺ってば、メッチャ幸せじゃねーか?)
仕事に疲れた静雄の身体を思いやる、胃に優しい手料理の数々に、心もとろとろに癒される。

一方、帝人はというと。

(えーっと、紅鮭一匹95円。トロロ芋とレンコンが、それぞれ傷物50円。ジャガイモ二個で30円、はんぺん詰め合わせが賞味期限ぎりぎり特価で100円、青梗菜と大根の葉っぱで……まぁ、50円?鶏肉も50円分、卵が6個で80円、……〆て505円(調味料とお米とデザート材料費は別)か。やったぁ♪今晩も予算700円以内の目標達成だぁぁ♪♪)

恋愛ベクトルは相変わらず静雄の一方通行だが、とりあえず二人は絶好調に幸せだ。
デザートを帝人が一切れをふうふう言いながらお腹に詰め、残りは静雄がぺろりと平らげる。


「……ちょっと、調子に乗って多めに作りすぎました……」
「胃薬いるか?」
「いえ、平気です♪」


静雄の分だけ食後の蜂蜜紅茶を準備し終えると、彼女はせっせと食器の後片付けを始めだすが、重い胃袋を抱えての作業が辛そうだ。

「なぁ、今日ぐらいは皿、俺が洗うから……」
「駄目ですよ。静雄さんはお仕事でお疲れなんですから。私に任せて……あ、何でしたら、お風呂沸いてますから、ゆっくりと入ってきてください♪」
可愛くて小さい彼女が、背中をきゅいきゅい押してくれば、静雄に拒める筈もなく。

帝人の本音は、静雄が下手に洗い物に手を出せば、水道代と洗剤の無駄遣いが気になり、更にイライラ度が増してしまうので、精神衛生の為にお断りだ……、である。
勿論、そんな帝人の心の中など読めない彼は、言葉通りに受け止める。

暖かい湯船に浸かって疲れた体の筋肉をほぐしていると、すりガラスの向こう側……、脱衣所では、帝人の黒い頭がゆらゆら揺れる。
彼女はこうやって、ずぼらな静雄の為、彼が風呂に入っている最中に、バスタオルや着替えの下着に、寝巻き代わりの洗いたてな黒スエットまで準備してくれるのだ。

勿論帝人は、静雄が喜ぶから保身のつもりで続けていた習慣だけど、夢見るドリーマーな彼は、至れり尽くせりの彼女に感謝感激だ。
きっと、新婚熱々のカップルでも、ここまで尽くしてくれる嫁さんなんて、今時見つける事ができないだろう。

(……あーあ、帝人の誕生日が、3月なのが惜しすぎるぜ……)

湯船につかりながら、指を何度も折り曲げる。
まだ5月だから、エンゲージリングを贈るのは、十ヶ月も先だ。
勿論、これは正臣が幼馴染の保身を思い、静雄についた大嘘なのだが、素直な彼は騙されている事に気がついておらず、今後どうやって帝人の両親に挨拶に行くかとか、お盆休みなら親戚一堂いるから、そん時でいいか……とか、夢見る暴走は留まりを知らず、どんどん先へと突っ走っていく。

作品名:ふざけんなぁ!! 1 作家名:みかる