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【ヘタリア】兄さんの子守唄 前篇

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兄、ギルベルト=プロイセン王国は、ナポレオン帝国の瓦解とともに、かつての勢力を取り戻し、欧州全土で恐れられている。
兄に、刃向かうなどと、愚かものの極みだ。


しかし、今、世界は大きく変わろうとしている。

「ドイツ」=ルートヴィッヒが生まれた事を知って、「ドイツ諸国」の反応はさまざまだった。ザクセンやバイエルン、ヘッセンに、ホルシュタイン。
その他の、数多くの「ドイツ」=ゲルマン民族の国々は、複雑に入り乱れている。
喜びの声を上げるもの、黙ってそっぽを向くもの、両手をあげて喜べぬもののそっと祝いの声をおくってきたもの・・・・・。

反対の声をあげたものたち。
兄はそれらを排除に行っている・・・・・・。
同じ「ゲルマン」の民であるはずの国々ですら、「ドイツ」の誕生を否定する。
それどころか、ドイツ統一を阻みたいフランスやロシアと協調し、「ゲルマン」同志を争わせようとしている。

「神聖ローマ」の時代以前から、ゲルマンの民が一度として統一されたことなどなかった。
そのために、大国の良いように操られ、互いに争わされ、小さな公国や王国がめまぐるしく建っては消える。



「俺は生まれてきてよかったの?」


いつもルートヴィッヒの心に、その疑問がこだまする。

「争いの種となるために生まれてきた」、と陰でこっそりとつぶやくものがいる。
「ゲルマンの民の夢の実現」と喜ぶものがいる。

どちらを信じればいいのか。
しかし、生まれてきてしまった以上、もうどちらでも生きていくしかない。
そばにいる兄プロイセンと、静かに見守る父のような存在のブランデンブルクはルートヴィッヒの誕生を本当に喜んでいてくれている。


それがなければ、もうどこかへ消えてしまいたい、と思う。
それほどまで、「ドイツ」は不安定で、とても小さい。


ルートヴィッヒの、体も、心も、まだ幼い。


(早く大きくなって、兄さんやブランデンブルクを助けたい・・・。
せめて、邪魔にならないようにしたい・・・・。)


最初喜んでいたルートヴィッヒの顔が陰ったのを見て、シュタインが言う。

「さあ、ルートヴィッヒ様。お着替えをなさって、お食事にいたしましょう。今朝は兄上様がご用意なさった宿題が目白押しで忙しゅうございますよ。」

ルートヴィッヒは、はっともの思いから醒める。

「うん・・・。」

主の幼い弟がしょげているのを見て、励ますように執事が言った。

「ルートヴィッヒ様。お食事をなさったら、すぐに兄上様へ、お返事を書いてくださいませ。でないとまた兄上様が、軍の電信を使って「俺のルッツに何かあったのか!!」と大騒ぎですからね!」

ようやくルートヴィッヒに笑顔が戻った。

(そうだった・・・にいさん・・・・俺が返事しないと、すぐに私用に軍の回線使っちゃうから・・・・。)

「うん。シュタイン。ありがとう。着替えてくるね。」

にこりと笑ってルートヴィッヒは着替えに行く。
その素直な幼子をシュタインは優しく見守る。



中庭からは、閲兵の声が響く。
兵士の訓練を見守る将校の中に、窓に現れたルートヴィッヒ=「ドイツ」の姿を鋭く見つめる視線があった。

(「ドイツ」など、いるものか!我ら「プロイセン」こそが、世界の覇者となるのだ!)

将校の憎しみに満ちた暗い眼・・・・・。



ナポレオンを破ってからというもの、プロイセン軍はかつての勢いと精鋭さを取り戻し、クラウゼヴィッツやグナイゼナウの改革も進み、その勢力は格段にましていた。


ちょうど同じころ、人々の膾炙にのることが一つ。

「ドイツの統一」。

ゲルマン民族として、一つの「国家」を作りたいという願いが人々の中に生まれてきていた。
ナポレオンによって蹂躙された人々が、フランスなどのラテンやスラブの大国に負けないために、「一つのドイツ」を望み、民族としての意識が急速に高まってきていた。
それと同時に、人種対人種の各々のいざこざが急増している。
自由な気風と、人種・宗教への寛容にあふれたプロイセンで、どうしてそのようなこと起きるようになったのか・・・・・・。
もともとプロイセンには、民族意識や、ナショナリズムとは無縁の国だった。
自由な気風のもとで、経済は発達し、宗教的に寛容なため、さまざまな民族の民が絶えず入り込み、活気があった。
その反面、「軍隊を持つ国家」ではなく、「国を持つ軍隊」と揶揄されることがあるほど、軍への傾倒はすさまじかった。
まわりを見れば、大国フランスは常にゲルマン民族の統一を阻み、オーストリアは多民族を支配しその勢力を保って敵対している。
遠くロシアも、東プロイセンのぎりぎりまでせまってこようとしている。
軍事的に強くなければ、すぐにつぶされてしまう。

ザクセンやバイエルン、ゲルマン諸国との小競り合いも尽きない。

「統一ドイツ」など夢の話だ。
しかし欧州の覇者となるために、「統一」は必要だ、という声が広がってきていた。

しかし、「プロイセン」王国の民であることを誇る軍人たちの間では、それは受け入れがたいことだ。

(プロイセンが、世界の覇権を握るのはよし。
しかし、「ドイツ」になってどうしようというのだ?!
われわれは誇り高きプロイセン軍人だ!

プロイセンの威光を「ドイツ諸国」いや、欧州中に轟かせてやる!

「ドイツ」=「ルートヴィッヒ」などいらない!

軍神・プロイセン殿=バイルシュミット卿こそが、われらの「国家」!)


窓から離れていく小さな「ドイツ」の後ろ姿を見て、将校はペッとつばを吐いた。




*****************************

「兄さん!!兄さん!お帰りなさい!」

帰ってきた兄にルートヴィッヒが駆け寄って飛びついた。

「おう!ただいま!ルッツ!!いい子にしてたか?」
「うん!兄さん!兄さん!!」

顔中に兄のキスを受けながら、ルートヴィッヒも兄にキスを返す。
ルートヴィッヒは兄に、軽々と抱きあげられて、くるくると回される。

執事のシュタインは、いつもの兄弟の再会のダンスに、半ばあきれながらも笑って見守る。

幼いルートヴィッヒにとって、兄は世界の全てだろうし、兄にとって可愛い弟は、世界中を敵に回しても守りたい存在なのだろう。


ようやくキスをやめたギルベルトにルートヴィッヒが聞く。

「兄さん・・・どこも怪我してない?おなかへってない?疲れてない?」

「どこも怪我してねえし、疲れてねえぜ!腹は減ってるけどな!」

「では、お食事になさいますか?すぐにご用意したしますので・・・。」

「ああ、シュタイン。飯食ったら風呂入るから、お湯を頼むな。」

「はい。かしこまりました。」

「あのね、兄さん。兄さんに言われてた本、全部読んだよ。剣術と銃の練習はちゃんと毎日やってたよ。」

ルートヴィッヒは兄にしがみついたまま、話しだす。
話したいことがありすぎて、どれから先に話せばいいのかわからない。

「そうか・・!いい子だ!!ルッツ!どれが面白かったか? 剣のけいこは明日、一緒にやろうな。」
ギルベルトはまた高らかに音を立ててルートヴィッヒにキスをする。
またルートヴィッヒも兄の頬にキスを返す。