【ヘタリア】兄さんの子守唄 前篇
「くっそー!おい、ルッツ!こいつになんか言ってやれ!」
「ねえ、戦地の兵は、どうやって体とか洗っているの?そういうの大変だろうに・・。」
「いまだに、お風呂はなし、でございますよ!それはそれは恐ろしい汚れ方で・・」
「よし!!今度、絶対に戦地でも風呂入れるようにすっぞ!でないとルッツが来た時に困るかんな!」
「ルートヴィッヒ様を戦地に連れて行くなどとんでもない!!どうしても、というならば、お二人でこの屋敷に帰ってきた時は、即刻風呂に直行していただきますよ!」
「シュタイン!お前、ひどすぎ!」
ギルベルトを無視して執事がルートヴィッヒに体を洗うスポンジを渡す
「さあ、ルートヴィッヒ様、お湯を抜いて新しいものと取り換えますから、お待ちくださいね。」
風呂の栓を抜かれて、湯船が空になる。
「さみいぜ!」
ギルベルトがわめく。
「只今新しいお湯をお入れしますよ。我慢なさいませ。」
シュタインがお湯を注ぐ間、ギルベルトは震えている。
「なーんか、お前、あのくそ坊ちゃんと口調が似てるよな!むっかつくーーーー!!」
「それはおほめいただきまして・・・。」
「ほめてねえ!!」
けらけらと笑っていると兄の手が伸びて、ルートヴィッヒは湯船に放りこまれた。
「お前も笑ってんじゃねえよ!ルッツ!今度は俺様が洗ってやる!!」
「ふはは!!兄さん!!くすぐったいよ!!」
二人で泡だらけになりながら、体を洗う。
「ん!お前もうちょっと肉つけねえとな。まだ、がりがりだなあ・・・。」
「兄さんこそ、ちょっとやせたんじゃないの?やっぱり戦地の食事はあんまりよくないの?」
「そんなことないぜ。昔にくらべりゃあ、格段にうまくなってるぜ。昔は食うもんないのに、行軍とかしてたしなあ・・・・。」
「・・・・行軍するのに食糧もっていかないの?」
「うん・・・まあ、略奪しながらってえのが普通だったしなぁ・・・・。今じゃあ、考えられねえことがいっぱいあったんだ・・・。あんころはなあ・・・。」
「・・・兄さん・・・・兄さんが今も痩せてるのは、小さいころにあんまり食べ物がなかったからなの?」
「いんや・・・・俺は昔からなんか余計な肉がつかねえ体質みてえだなあ・・・。食っても食っても全部筋肉になっちまうな・・・。おい、ルッツ!お前はちゃんと食べてるか?!早くでかくなれよー!俺よりもでかい大男になれよな!」
「兄さんより大きくなるの?いっぱい食べなきゃ・・・。」
「うん!その意気ででかくなれ!!でかくなったらいろんなとこへ連れてってやるからな。」
「うん・・・・くしゅん!!」
ルートヴィッヒがくしゃみをする。
「お!寒くなってきたか?シュタインー!もっとお湯くれよー!ルッツが寒いってよー!」
「はい。ただいま!新しいお湯につかったら、それそろおあがりくださいませ。ふやけてしまいますよ。お二人とも。」
「泡を流したら出ような、ルッツ。」
「うん。兄さんも、やっときれいになったね!」
「このやろう!!お前まで言うか!」
風呂からあがると、ルートヴィッヒはすっぽりとタオルにくるまれて暖かい寝室に運ばれた。
「うん・・・いいよ兄さん。自分で拭けるから・・・。兄さんこそ、早く拭かないと・・。」
「いいんだよ。俺がやりてえんだ。」
「じゃあ、兄さんは俺が拭いてあげるね!」
兄弟でお互いにぬれた髪をタオルでごしごしとこする。
「ちゃんと乾かさないとな。風邪ひいちまう。」
「兄さん、少し髪が伸びたね。目に入りそうだ。」
「んー、じゃあ、明日切ってもらうか。お前も伸びてんな。一緒に切ってもらおうな。」
髪を乾かして、着替えたころには、もう月が高く上がっていた。
「遅くなっちまったなあ・・・。ルッツ。そろそろ寝るぞ。」
ひょいと弟をベッドに乗せると、ギルベルトも横になる。
「うん・・・ねえ、兄さん・・・・。」
「なんだ?」
「戦地で兄さんはどうやって寝てるの?ベッドとかないんでしょう?」
「んんー。場所にもよるけどなあ・・・。簡易ベッドとかあるしな。兵は地面とかに寝っ転がって寝てる時もあるし・・・・。まあ、いずれにしろ、改善の余地があるなあ・・・。」
ギルベルトはふと、眠そうな弟を見る。
「さあ、もう寝ろルッツ。明日も俺はここにいるからな。明日もいっぱい話せるからな。」
「うん・・・・・。兄さん・・・・・。」
「ん?」
「兄さんが・・無事に帰ってきてくれてよかった・・・・。」
「俺は大丈夫だぜ・・・・ルッツ・・・。いつも必ずお前のところに帰ってくるだろ?」
ギルベルトはルートヴィッヒの髪を優しくなでる。
「うん・・・・。でも・・・・兄さんがいないとね・・・・兄さん・…なにしてるかなあ・・・・元気かなあ・・・って思うんだ・・・。」
「嬉しいぜ、ルッツ。俺もいつも思ってるぜ・・・・。お前がどうしてるか、ちゃんと食ってるかとか、元気でいるかな、とかな。」
そっとルートヴィッヒはギルベルトの腕に頭を寄せる。
ギルベルトはルートヴィッヒの頭を腕枕してやる。
「兄さん・・・・。俺はまだ戦場に行っちゃだめなの?」
「うーん、まだお前は小さいからなあ・・・・。もぅ少し大きくならねえとなあ・・。」
「でも兄さんは俺位のときはもう戦場に行って戦ってたんでしょう?俺も行ったらいけない?」
「俺が小さいころと今とじゃあ、戦いのやり方がぜんぜん違うからなあ・・・・。今の戦いは、剣と剣のやり取りじゃねえからな・・・・・。昔とちがって、すぐ戦局が変わっちまったり・・・・。それにゃあ、司令伝達をなんとかしねえとなあ・・・。」
また兄が考え込んでしまう。
今の軍はまだまだ改革しなくてはならないことが山積みのようだ。
「はやく兄さんを手伝えるようになりたいな・・・・。」
「んじゃあ、今は、早く寝ろ。いっぱい寝て、いっぱい食って、いっぱい勉強して、大きくなれ。そしたら、一緒にいこうな。ルッツ。」
「うん・・・・。」
(今、兄さんを手伝いたいのに・・・・。いつまでも小さいから・・・。早く大きくなりたい・・・。)
そっとルートヴィッヒの頬にギルベルトはキスをする。
「そんな顔すんな。俺はお前がいるだけで頑張ろうって気になれるんだぜ。
お前はゆっくり大きくなればいい。子供時代ってえのは、俺たち「国」にとったって、大事なもんなんだぜ。俺も子供のころは、早くでかく大きくなりてえってずっと思ってたけどな・・・。
あんまりすぐに早く大きくなって、子供の時がないってえのも、良くないんだぜ・・・。」
「兄さんはそう思うの・・・?子供時代がないとよくないって・・・。」
「んんー。なんていうかなあ・・・・・・。俺の子供の時はなぁ・・・・。素直になんでも言えて、素直に・・・なんでも出来て・・・・・。今みたいにめんどくせえことなんかなんにも考えてなくてよ・・・・。あの時は・・・あの時なりに楽しかったから・・・・な。」
ルートヴィッヒは必死で眼を見開いて、真剣に聞いている。
ギルベルトはふっと笑うともう一度弟にキスをする。
「お前は今、楽しいか?」
「う・・・・・ん・・・。」
作品名:【ヘタリア】兄さんの子守唄 前篇 作家名:まこ