二年後設定で沖神!
けれど、その口は開かれない。
言い返してこない。
手錠をかけられた手も動きを止めている。
沖田は神楽の肩を強くつかむ。
身を寄せていく。
ただでさえ少ししか空いてなかった距離はすぐに詰まる。
ガタッ、という堅い音が響いた。
思わず神楽が身を退いて、その背中を扉にぶつけたのだろう。
逃げ場はない。
避けたいのなら、抵抗するしかない。
しかし、お互いの身体のあいだにある神楽の手は動かないままだ。
さっきテレビの画面の中で男を豪快に投げ飛ばしていたのが、まるで嘘のようだ。
暴れるどころか、押し返そうともしない。
じゃあ、こっちは、やってもいいってことだって受け止める。
などと思い、沖田は少し笑った。
顔を近づける。
もう距離はほとんどない。
呼吸と体温を感じる。
けれども、神楽はここまで迫られて、その顔を背けなかった。
だから。
唇に、唇を重ねる。
神楽の身体がビクッと震えた。
くちづけるのは、これが二回目。
一回目は触れてすぐに離れた。
だが、今は離れないでいる。
その感触を、心のままに、味わう。
神楽は動かない。
肩をつかんでいる沖田の手に、神楽の身体が緊張で硬くなっているのが伝わってくる。
受け止めて立っているのが精一杯なのだろう。
それがわかっていて、沖田はさらに攻める。
直後。
神楽が暴れた。
手錠をかけられた手が強く押してくる。
「な、なに……ッ」
神楽は混乱しきった様子だ。
その顔はゆでられたように赤い。
「なにって、舌を入れただけだ」
沖田は落ち着いた声で返事する。
「普通だろ。それなのに、なに取り乱してやがる」
余裕たっぷりに笑って見せる。
「まさか、てめー、口と口が触れて終わりだって思ってたのかィ?」
からかうように言った。