二年後設定で沖神!
深くくちづけていたときの激しい感情は凪いでいる。
今は、ちょうどいい温度の湯につかっているような心地良さを感じている。
ふと、神楽の身体が動いた。
腕の中で、わずかに身を退いた。
だから、沖田は抱く力をゆるめ、さらに腕をおろした。
神楽がまた身を退く。
とはいえ、すぐうしろには扉があるので、たいしてさがれない。
扉にはぎりぎり背中がつかない距離で止まった。
うつむいて、立っている。
沖田はその様子を眺めたあと、踵を返した。
机のほうにもどる。
そして、立ったまま、机の上の電話へと手をやる。
内線で隊士を呼びだした。
そのあと、どちらも動かずにいる。
部屋の中は静かだ。
しかし、部屋の外から扉を叩く音が聞こえてきて、沈黙が破られた。
神楽が顔をあげた。
ハッとした表情をしている。
早い動きで扉の近くから離れた。
そのあいだに、沖田は扉のほうへと行く。
沖田の眼のまえで扉が開いた。
「失礼します!」
隊士がひとり、あらわれた。
その手には鍵と傘を持っている。
傘は神楽のものだ。
「ご苦労」
沖田は普段どおりの冷静そのものの様子で告げた。
立っているのは扉の近くで、隊士のまえに立ちふさがっている形になる。
これ以上は進ませないつもりだ。
今の神楽をあまり見せたくない。
沖田は隊士のほうに手をさしだした。
鍵と傘を受け取る。
「……もう用はない。行っていい」
「はい!」
元気よく返事をして、隊士は去っていった。
扉が閉まった。
また、部屋にふたりきりになる。