二年後設定で沖神!
沖田は神楽のほう近づく。
すぐそばまで行った。
神楽は壁にもたれている。
うつむいているので、表情はよく見えない。
そのおろされている腕を、沖田はつかみあげた。
さっき隊士から受け取った鍵を使い、手錠をはずす。
それでも、神楽は顔をあげない。
沖田のほうを見ない。
無言で、沖田は神楽の視界に入るところまで傘を差しだした。
神楽は沖田のほうを向かないまま傘をつかんだ。
強い力で自分のほうに引き寄せようとしている。
だから、沖田は傘から手を放した。
傘は完全に神楽のほうに行った。
沖田は踵を返す。
机に向かって、歩く。
ふと。
背後で動く気配を感じた。
即座に沖田は手に持っていた手錠とその鍵を床に捨てる。
間を置かず、振り返る。
それと同時に抜刀していた。
迫ってくる。
傘。
神楽の武器である傘。
その一撃を、沖田は刀で受け止めた。
互いの武器の向こうから、神楽がにらみつけてくる。
「女の敵アル!」
さっきまでとは打って変わって、威勢がいい。
だから。
「安心しろィ」
沖田はニヤッと笑う。
「てめーにしか、しねーよ」
そう告げた。
直後。
神楽は眼を見張った。
その顔がみるみるうちに、また赤く染まる。
口は強く引き結ばれている。
言い返したいが、言い返せない。
そんな様子だ。
神楽は傘を自分のほうに引いた。
チッと舌打ちでもしそうな表情で、身をひるがえす。
去っていく。
それを沖田は引き留めずに見送る。
やがて、神楽は部屋から出ていった。
パタンと扉が閉まった。
沖田は刀を鞘にしまい、床に落ちた手錠と鍵をひろいあげる。
それから、また、机のほうに行く。
仕事をしなければいけない。
机の上には、処理しなければならない書類が山積みだ。
沖田は立派な椅子に腰かける。
ふたたび、仕事を始める。
身体には活力が満ちていた。