二年後設定で沖神!
ふいに。
ガッシャーン!
大きな音があたりに響き渡った。
ビルの三階の窓ガラスが割れて、その破片が飛び散り、降ってくる。
様子を見ていた人々は大あわてで逃げていく。
一方、割れた三階の窓から、人が吹き飛ばされた様子で飛び出してきた。
さっきまで人だかりができていた場所へと、落下してくる。
娘である。
その娘は地に叩きつけられるまえに、空中で、くるりと身体を回転させた。
しなやかな身体だ。
足から、綺麗に着地した。
その手には傘を持っている。
髪はツインテール。
可愛らしい外見である。
けれども、まわりにいる人々を一切見ずに、ただビルをにらみつけて立っている、その背中は勇ましい。
神楽だ。
予想したとおりである。
沖田は眼を細めて、神楽の姿を眺める。
だが、神楽は沖田が近くにいることにまったく気づいていないようだ。
少しして、ビルから男たちが出てきた。
皆、浪人風の格好で、刀を手にしている。
数は十人を超えている。
殺気だった様子。
何人か、そうとうな手練れがいる。
そう沖田は感じ取る。
自然に手が腰に差した刀のほうに行く。
まわりにいる人々は巻きこまれるのを恐れて、いっそう遠ざかった。
「お嬢ちゃん、なめた真似してもらったら困るんだよ」
浪人風の男のひとりが言った。
不穏な雰囲気。
しかし、神楽はまったく怯まない。
「なめるわけないアル。むさいオッサンなめるなんて、お金もらってもお断りアル」
べーっと舌を出して見せた。
すると。
「なんだと、テメー!」
「ふざけんじゃねえ!」
浪人風の男たちは怒鳴り、神楽に襲いかかった。
それにも神楽は怯まず、応戦する。
神楽は強い。
だが、敵の人数が多い。
すっと沖田の身体が動いた。
争っているほうへと。
気づいた浪人風の男が進路をふさいだが、沖田はあっさりとそれを退けた。
「なんだテメー!?」
男が問いかけてくる。
「何者だ!?」
そのあいだにも沖田は移動する。
神楽の近くまで行く。
「俺か?」
かぶっている笠をあげ、答える。
「俺ァ、コイツの恋人でィ」
眼を神楽のほうに向けた。