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【イナズマ】赤いきつねと円堂守

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「うーん……厳密に言うと違うんだけど、まあいいや、俺は狐だし」
「き、狐?」

確かに、頭に生えた大きな耳は狐の耳のようにも見える。

「うん、そうだよ。狐。ああ、でもその辺にいる野狐と一緒にしないでくれるかな。ちゃんと正一位稲荷大明神の眷属だよ」
「しょういち、い…?けんぞく…?」
「えーと、そうだな……まあ、神様なんだ、簡単に言えば」

神様って。
頭上に盛大に疑問符を浮かべながら、円堂はとにかく落ち着こうと麦茶を一気に飲み干した。
そもそも何故こんなことになったのか。

「……その、神様が、なんで俺のとこに?」
「……君が、拝んでくれたから」
「え……?」
「守は、俺がはぐれ稲荷になる前に最後に拝んでくれたから。だから」
「え、俺がお前を拝んだのか?」
「覚えてないの?」

ちょっと待て、待ってくれ。
円堂が頭を抱えて唸りだしたのを見ながら、少年はスープまできっちり飲み干した。

「お代わりしてもいいかい?」
「あ、ああ……」

彼は立ち上がろうとする円堂を制すると、自分で焜炉に火をかけて湯を沸かし始めた。
白く、長い、もう見るからに触り心地がよさそうな尻尾がふわふわと左右に揺れている。

「覚えてないかな。そうだよね」
「い、いや、その…ちょっと待ってくれよ。そもそもいつの話なんだ?」
「先週だよ」
「先週……」

といえば、春休みが始まるか始まらないかの頃だ。

「……ヒントない?ヒント」
「ヒントね」

ばりばりとビニールの袋を開けながら、少年はつりあがった目を細める。

「そうだな……夕方だったかな」
「夕方……」
「守は制服姿だったよ。サッカーボールを提げててね。結構な大荷物だったかな」
「制服……サッカーボール……大荷物……」

そんな格好で夕方ふらついていたのは

「……水曜、かな?」
「うん、そうだね」

水曜日はちょうど終業式で、その後部活をしていたから帰りがすっかり遅くなってしまった。
持ち帰らなければならない荷物も大量にあって、だから少し近道しようとしていつもは通らない路地に入ったとき、

「……ん?」

見つけたのだ。
小さな、赤い社を。



それはしんと静まり返った小さな町工場の一角に建っていた。
木々が生い茂り、湿っぽい裏手側だ。

「……お社だ」