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【ヘタリア】 兄さんの子守唄 後編

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「要請・・・・?陛下が俺に・・?」

「至急、王宮までお越しくださいとのことです・・・・。」

「・・・王宮に?どうして?!兄さんに何かあったの?!」

あわてるルートヴィッヒに、シュタインは説明する。

「兄上は無事に視察に行かれて、何も問題ありません・・・・。ですが、ルートヴィッヒ様・・・・。王妃様が、ルートヴィッヒ様と夕食をご一緒したいとのご要望でして・・・。特に今夜からはギルベルト様がいらっしゃらないので、王宮にお泊まりくださいとのことですが・・・・・。いかがいたしますか?」

「・・・行かなきゃ・・・・だめでしょう・・・?」

「王宮からの正式なご招待でありますし・・・・。」

「王妃様・・・・兄さんがいないから・・・・心配してくれてるんだね・・・きっと・・。」

国王からは、王宮で暮らすように再三の要請があったが、ギルベルトがあの事件の後だからと断っていたのだった。

「わかった。行くよ。シュタイン、用意して。」

「はい・・・・。」

シュタインは、ルートヴィッヒの仕度をしながら、ギルベルトへすぐに連絡を入れた。

ギルベルトの屋敷の前には、もうすでに王宮からの迎えが来ていた。

着替えたルートヴィッヒは馬車に乗り込み、王宮へと向かう。
傍らには執事のシュタインが一緒にいるが、不安は隠せない。

(しっかりしろ!ルートヴィッヒ!兄さんがいない間、これくらいこなせないと!)

不安に顔がこわばる。

王宮へ着くと、すぐに王妃が迎えにきた。

「はじめまして。貴方がドイツね?お待ちしていましたよ。さあ、こちらへいらしてね。」
挨拶もそこそこに、ルートヴィッヒは引っ張られるように王宮の奥の間へと連れていかれた。
シュタインは、休職中の軍人として、控えの間に追いやられてしまった。
ため息をつきながらも、国王と王妃の歓待に、シュタインは安堵する。

(これなら・・・大丈夫ですね・・・。)

ルートヴィッヒは、国王と王妃の前でも立派にふるまっている。

(さて、と私は王宮内の、新しい情報でも探ってみるか・・・・・。)

シュタインは、ふと、主であるこの兄弟との別れを予感する。

(たぶん・・・・このまま王宮で暮らす事になるでしょうね・・・・・。それも、一つの試練ですが・・・・・。きっとルートヴィッヒ様のために良いことですよ・・・。ギルベルト様・・・。)
王宮の奥庭へと進みながら、シュタインは考える。

(・・・・・お屋敷から軍へ、先に自分の荷物を運んでおいた方がいいな。
でないと、あの主は、なんとか引き留めようと画策するだろう。
怪我した左手はもう剣を持つには役に立たない。
せめて、作戦参謀の部署に戻ってお役にたとう・・・・・。)

シュタインの様なユダヤ人、外国から来たものたちは、これからのプロイセンでは暮らしにくくなるのだろう。
ゲルマン人のための、ドイツ。
「ドイツ」という国がなれば、それは顕著になる。
人種や宗教にはこだわらず、有能な人間を登用していた時代はきっと終わる。
その萌芽があの貴族将校たちのような人間ではないのか?
大王の時代の、自由な気風は、これから失われていくのだろう。
しかし、それが「ドイツ」ならば・・・・・。
他の国々が自国民、自分の民族を優遇し、多人種を排斥し、登用を妨げているように、この「プロイセン」も、そのように国の性質が変わっていくのだろう。
自分のような人間が生きていくのは難しい時代となって行くのかもしれない。
これも時代の流れなのか。

しかしこのまま、ドイツ人の諸国が分裂した状態でいるのならば、またいつか現れるであろうナポレオンのような人物にどう対抗するのか。
時代が求めているのも・・・・・きっと。

シュタインは、「国」に身近に仕えながら、その先に訪れるであろう「未来」を予測していたのかもしれない。
彼の亡くなった後の未来に、その顕著な例が恐ろしい悲劇を伴って行われてしまったのは、歴史の不幸か。

たった一人の独裁者のために、人間はどれだけ不幸になるものか・・・・・・。



王妃の歓待を受けながら、国王の満足げな顔を見ながらルートヴィッヒはふと、悟った。

自分はいずれ「国」となる。
今はまだ兄の元で守られているだけの存在だが。
「国」として成った時、こうした公式な席でもきちんとふるまわなければならない。
まして、兄のように、政治や軍事に携わらなければならない・・・・。

自分にそんな事が出来るのだろうか?

嬉しそうにデザートを薦める王妃にお礼を言いながら、ルートヴィッヒの不安は積もっていく。
食事が終わり、屋敷に帰りたいと言ったが、国王はルートヴィッヒに用意した部屋を自慢げに見せた。

恐ろしく豪華で広い。
今日から、ここで暮らすのだ、と言われた時には、恐怖を感じた。

「ギルベルトが戻ってきたら、みんなで一緒にお話ししましょうね。」

子供のいない王妃は、ルートヴィッヒがここで暮らすと信じ込んでいる。

(兄さん!!どうすればいい?)

大人数の召使がルートヴィッヒを風呂に入れ、着換えさせた。
シュタインは、どこにいるのか全くわからない。たぶん、軍人の控えの間に通されたままなのだろう。連絡をしたいがまったく無視されてしまった。

ルートヴィッヒは用意された部屋に、一人で残された。

外はもう真っ暗になり、空には雨雲らしい黒い雲が動いていて寒々しい。

がらんとした部屋の明かりを召使が消していった。

自分で明かりを消すと言ったが、王宮の規則だろつっぱねられた。

闇が怖い・・・・・。
真っ暗な夜が怖い・・・・。

いつもは兄さんが隣にいてくれた。
いつも、うなされると優しく歌ってくれる。
ルートヴィッヒが眠りにつくまで、暖かいその胸に抱きしめてくれる。
なのに、今、自分はこんなところで一人ぼっちだ。

国王が言っていた。
「ドイツ殿も、「国」となられるのなら、そろそろ王宮に来て、政治を学ばれるといい。」

ああ、これからずっとここにいて、一人でこの部屋で暮らすのか・・・・・。

「兄さん・・・・。」

声に出すと、たまらなく悲しくなった。
ベッドに入って横になる。

冷たい・・・・。なんて冷たいのだろう・・・・・・。
いつもは兄さんが一緒にいてくれるから、ベッドが冷たいなどと思った事がなかった・・・。

カーテンを閉じないでくれと言った窓へと行く。

ベッドから窓まですら、いつもよりもずっと遠い。

窓の外は、荒れた天気の風が吹き、黒い大きな雲が真っ暗な空を流れている。
月も星もなく、心を慰めるものは見当たらなかった。

外は風が吹き荒れていて、きっともうすぐ雨が降ってくるのだろう・・・・。

ベルリンを離れて視察にいっている兄は、しばらくは帰ってこれない。
敷設された全ての路線を見回ってくるのだ。この後、起きるかもしれない戦いに備えて、実際に兵を鉄道に乗せて、かえってくる、を繰り返すのだという。

ああ、兄さん!

あまりの心ぼそさに涙が出そうになった。

ぐっとこらえる。

寒い・・・・ここは寒くて、とても暗い・・・・。


自分がいつか兄を助けられるよいになどなるのだろうか?
こんなに闇などを怖がっていて・・・・。