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【ヘタリア】 兄さんの子守唄 後編

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それでも、だんだん強くなっていく風の音に、寂しさが募っていった。

「・・にい・・さ・・」

声が広い部屋に響いた。

もう駄目だ・・・・涙と声がのど元をせりあがってくる。

その時、声が聞こえた。

風の音に混じって、誰かが歌っているようだ。

窓の外を見つめるが、誰もいない。
風に揺れる木々が黒く動いているだけだ。

気のせいだったのだろうか?

いや、また聞こえる!

兄さんが俺にいつも歌ってくれる子守唄!

「・・・・・・・・・・・・・・!」

窓から離れて、ドアへ向かう。
警護の兵士たちがドアの外で控えている。

「どうなされました?どうぞ、御戻りを。お休みくださいませ。」

兄さんがいると言っても、視察に行っている兄がこんなところにいるはずもない。
とりあってはもらえなかった。

仕方なく部屋に戻って窓の外を見つめる。
Weist du wieviel Sterne stehen     星がいくつあるか知ってる?
an dem blauen Himmelszelt?      青い空の上に
Weist du wieviel Wolken gehen     沢山の雲がどうやって漂うか知ってる?
weithin uber alle Welt?         広い世界中に

やはり歌は聞こえる!
だが、風にかき消されて、誰の声なのかわからない。

低く小さな声で、歌っている。
一体どこから聞こえてくるのだろう?

窓を開けたら、すさまじい風の音で歌はかき消されて聞こえなくなってしまった。
窓をしめる。

するとやはり歌声が聞こえる。


Gott im Himmel hat an allen    神はあなたのすべてを喜び、
seine Lust, sein Wohlgefallen,    あなたは神の宝
Kennt auch dich und hat dich lieb.   神はあなたを知っており
Kennt auch dich und hat dich lieb.   あなたを愛している  


静かで優しい歌声。

(兄さん?兄さんなら・・・・ここまで来てくれるだろうし・・じゃあ、この歌はだれが歌っているの?)

Kennt auch dich und hat dich lieb.   神はあなたを知っており
Kennt auch dich und hat dich lieb.   あなたを愛している  

歌は低く、風に交じって響いている。
ルートヴィッヒはベッドに入って、微かに聞こえる歌に聞き入る。
風は吹き荒れて、雲が空にちぎれ飛んでいく。

Weist du, wieviel Kinder fruhe   何人の子供が朝に起きあがるか知ってる? 
stehn aus ihrem Bettlein auf,    その小さなベッドの上で
Das sie ohne Sorg und Muhe    心配事や問題もなく
frohlich sind im Tageslauf?     一日中、幸せに

(いつも、兄さんが歌ってくれる歌・・・・誰が歌ってるのかわからないけど・・・)

この王宮の中にも、兄さんの歌を歌っている人がいる。
俺に歌ってくれているのかわからないけど・・・。

おんなじ歌を知って歌ってる・・・・。

低く繰り返される歌は、遠くなり、近くなる。

(兄さん・・・・・。寂しいけど、頑張らないと・・・。早く兄さんを手伝えるようになるんだ・・・。明日から、国王陛下に政治について勉強するって言おう・・・。いつまでも、頼ってばかりじゃだめなんだ・・・・。兄さん・・・・俺がもっと勉強したら、一緒に視察にも連れて行ってくれるかな・・・・。)


Gott im Himmel hat an allen    神はあなたのすべてを喜び、
seine Lust, sein Wohlgefallen,    あなたは神の宝
Kennt auch dich und hat dich lieb.   神はあなたを知っており
Kennt auch dich und hat dich lieb.   あなたを愛している

(もう、子供でいるのはやめよう・・・・。兄さんはいつでも俺のそばにいてくれるんだ。
それを信じて、大人になろう・・・・・。)

いつの間にか、ルートヴィッヒは眠りについていた。
風はさらに強く吹き荒れ、うなりをたてて鳴る。





「どうか、国家様・・・・風がひどくなってまいりました。降りてきてくださいませ!」

声をひそめて兵士が木の上のギルベルトに話かける。
国家殿は、さきほどからずっと王宮の中庭の木の上で歌っているのだ。

プロイセン殿は、なんと奇妙な事をなさるのか・・・・。
聞けば、ベルリン駅から駆け付けて、弟君の部屋に案内しろと言ったが、王妃にもう弟が寝ていると断られた上、視察の鉄道の折り返しの発車時刻がせまってきているのだという。
それが木に登るのとどう関係があるのか・・・・。全く国家殿のやることはわからない。

ギルベルトはシュタインからの知らせを受けて、すぐに王宮へと向かった。
勝手なことをした国王に怒りを感じたが、ずっと要請を断り続けていたのも自分なのだ。

過保護がすぎるのかもしれない・・・・・。


駅での兵士の積み下ろしが終わったら、すぐにベルリンを立たねばならない。
時間を計り、改善点を探しだすのが、今回の視察のもっとも重要な事柄だ。

その時間の合間をぬって、勝手に王宮を連れ去られた弟に会いに来たのだが・・・。

王妃の言うように、もうルッツが寝ているのなら・・・・。
王宮の奥まった部屋で寝ているルッツを探し出して連れ去ってもいいが、今回の視察には連れていけないのだ・・・・・・・。子供の体にはきつすぎる・・・。

弟はまだ怖がっているのではないか・・・・。
泣いていたなら、誰が慰めてやれるんだ?

しかし、国王もそろそろルートヴィッヒを手元に置いて勉強させたいと言っている。
今回がいい機会なのかもしれない・・・・・。

でも、もしルートヴィッヒが泣いていたら?

ギルベルトはたまらなくなった。

ベルリンの駅に戻る時間まで、せめてここにいてやりたい。

ルートヴィッヒに会ったら、かえって離れられなくなってしまうかもしれない。
でもなにか今してやりたい・・・・・。

王宮の中庭の高い木が見えた。
あれは前に演奏会をさぼって、枝に寝そべって聞いていた木だ。
あの木から演奏会の音が聞こえたのなら、ルッツの部屋まで聞こえるかもしれない。
中庭くらいなら、王宮の奥深くに行くのと違って、駅まで馬で駆け戻るにも手間はかからない。

ギルベルトは、兵士が止めるのも聞かずに木によじ登った。

風が荒れて、枝が揺れる。

風に交じって届くだろうか?
あまりに大声だと、まわりの人間が起きてきてしまうだろう。

ギルベルトは静かに歌い始めた。

Weist du wieviel Sterne stehen     星がいくつあるか知ってる?
an dem blauen Himmelszelt?      青い空の上に