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【ヘタリア】 兄さんの子守唄 後編

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自分の甘さと非力さを今さらながらルートヴィッヒは思い知る。

(いつも兄さんに言われてたのに!相手に情けをかけるな。躊躇するなって!!)

「ルートヴィッヒ様!駆けます!しっかりつかまって!!」

はっとなって、シュタインにしっかりとつかまる。

後ろからは将校達がものすごい勢いで馬を走らせてくる。

パァンと乾いた音がして、銃声がする。

追って来る将校たちがルートヴィッヒに発砲してくる。
距離は縮まり、すぐにつかまってしまいそうだ。

「ルートヴィッヒ様!だめです!!こちらには暴徒たちがおります!!」

シュタインが叫ぶ。

前方には、自由主義者達と思われる銃を持った暴徒たちが歩いている。
彼らは口々に何かを叫んでいる。

そのとき、ルートヴィッヒはあることを思いついた。

「シュタイン!!このまま、まっすぐ市民軍の方へ行って!!」
「何故です!?」

猛烈なスピードで走らせている馬の上で、舌を噛みそうになりながら、ルートヴィッヒは叫んだ。
「俺達は私服だけど・・・追手は将校の服を着てるでしょう!だから!」

シュタインははっとなると、言った。

「了解です、ルートヴィッヒ様!さすが、ギルベルト様の弟君であられる!!」

シュタインは馬を暴徒達の目の前に走らせる。
追手は暴徒など見えていないのか、そのまま追いかけてくる。

「助けて!!市民の皆さん!!軍隊のやつらが僕を人質にしようとしてるんだ!!」

ルートヴィッヒとシュタインは馬から飛び降り、暴徒の群れの中に駆けこみながら、出来る限りの大声で叫んだ。

駆けこんできたルートヴィッヒとシュタインを何事かと、見ていた市民軍は、顔から血を流し、袖のちぎれたシャツを着たルートヴィッヒと、腕から出血し、血まみれの平服を着たシュタインをみると大騒ぎになった。

「軍は撤退したんじゃなかったのか!!」
「野郎・・・俺達をだましやがったな!!」
「子供を人質だと?!どこまで卑怯な奴らだ!!」

中には、ルートヴィッヒ達の素性を確かめろ、という声もあったが興奮状態の市民軍は、馬で近づいてくる制服の将校達を見ると、一斉に銃をそちらに向けた。

将校の一人が馬から落ちた。
わあっという声があがり、市民達が将校を取り囲んでいる。

しかし、残った将校二人はまだ馬に乗ったまま、市民のいない方へと逃げていく。

「こちらへ!」

シュタインは、興奮する市民から離れて市街の入り組んだ路地へと走っていく。


「うまく撒きましたね!この道へは大まわりをしないと出られません!今のうちに!」

シュタインとルートヴィッヒは王宮に向かってひた走る。

後ろでは市民たちが騒いでいる。
どうやら軍隊は本当に市内から撤退するらしい。
市民達は口々に勝利を叫んでいる。

その合間をぬって、王宮へと近づいていく。
大通りの手前、王宮の前の広場に出る。
王宮が目前に見えてきた。
もうすぐだ。

「こっちだ!いたぞ!」

突然後ろから声がした。

例の将校たちだ。
まだしつこくルートヴィッヒ達を追いかけてくる。

シュタインが叫ぶ。

「ルートヴィッヒ様!走って!王宮まであと少しです!」
「うん!」

必死で走るが相手は馬に乗っている。

どんどん距離が縮まっていく。

「へっ!逃がすかよ!おい!」
「まかせろ!」

逃げる二人の前にドカっと剣が突き刺さった。

「何をしている?!マイヤーブルク!」

マイヤーブルクと呼ばれた将校は、なぜか剣を二人の前に投げたのだ。

シュタインがにやりと笑った。
「わざわざ剣を渡してくれるとは・・・・。」

「さあ、ルートヴィッヒ様!お行きください!行けますね?」

最後はほとんど命令に近かった。
「シュタイン!」

「兄上をすぐに呼んできてください!」
そう叫ぶと、シュタインは地面にささった剣を引き抜いて将校達に向き直る。

ルートヴィッヒは、歯を食いしばると王宮に向かって駆けだした。
今の自分に出来ること・・・それはシュタインが時間を稼いでくれる間に、兄ギルベルトを呼びに行くことだ。ここにいてもシュタインの足手まといになる。

「ああ、シュタイン!!無事でいて!!すぐに戻るから!」

心に思っただけでなく、涙が交じった声が出ていた。

ルートヴィッヒは大通りへと走っていった。

それを横目で確認するとシュタインが言った。

「では、どちらからお相手しようか?」

剣をかまえ、二人の将校を挑発する。

「ふん・・・・いくら貴様が剣の名手だとて!いまどき、剣などなんの役にもたたぬわ!」

将校が小銃を構えてシュタインの方へ向ける。

シュタインは銃が発射される前に相手の前に飛んだ。
剣で銃をはたき落とす。
「くっ!」

銃が地面を転がっていく。
将校は剣を引き抜いた。

ガシン、と音がして、剣と剣がぶつかる。
激しい剣の打ちあいとなる。
二人とも、かなりの剣の使い手だ。
打ちあいが続くが、勝負はつかない。

そのとき、大通りから、ルートヴィッヒの叫び声が聞こえた。

「・・・・シュタイン!!・・・・・兄さん!」

(ルートヴィッヒ様?!)

一瞬、シュタインの意識が大通りの方へとそれる。

その一瞬を将校は見逃さなかった。
ザクっといやな音がして、剣がシュタインに突き刺さる。

「・・・・!」

「このユダヤ人め!!いくら戦場で英雄だとて、俺達プロイセン貴族の上に立つなどと許せるか!!」

シュタインの脇にささった剣に血がしたたる。

剣を体に突き刺したまま、シュタインは将校に切りつけた。

「最後まで油断するな、と教わらなかった?この坊やが!」

将校が胸を切り裂かれて、あえいだ。
次の瞬間、銃声が響いた。

しかし、倒れたのは、シュタインと戦っていた将校だった。

「な、なぜ・・・・。」
「なぜだあ?お前、邪魔なんだよ!プロイセン、プロイセンって、うるせえし。」

もう一発銃が放たれる。
「・・・!」
シュタインの体がかしぐ。

「俺はなぁ、お前らみたいなのと違って、軍で出世したいなんて思ってねえんだよ!俺が欲しいのは金だ!金さえあれば、こんなくそみてえな軍から抜けられる!その金をくださるってえ方がいらっしゃるんだよ!」

「お、お前・・マイヤー・・ブル・ク・・・我が国を・・・プロイセンを裏切るのか!!」

「へん!元々俺はこの国の人間じゃねえ!プロイセンなど知るか!」

大通りで捕まったルートヴィッヒが連れてこられた。
血を流し、倒れているシュタインを見て悲鳴が口から洩れる。

「シュタイン!しっかりして!!シュタイン!!」

バシっと、ルートヴィッヒは自分を取り押さえている将校に殴られた。
口の端が切れて血がにじむ。その口を押さえられてしまった。

「うるせえぞ!この餓鬼が!」

「早くずらかろうぜ。「プロイセン殿」が戻ってきたらやっかいだ。さっさとこの餓鬼を渡しちまおう。」
撃たれて転がっているヘルトリング将校が尋ねる。

「・・・・・マイヤーブルク・・・いったい・・・誰に・・この餓鬼を・・・。早く・・・・殺してしまえば・・・・いいもの・・・・・・!!」