時の狂ったその島で
時は少し遡る。
ア゛ーーーーッッッ、
と悲鳴のような電子音を響かせながら森の中へと転がっていったハロを追いかけていた。
「おいおいハロっ、急にどうしちまったんだよ・・・っ」
必死に追いかけていたら、ハロが何かにぶつかったらしくその何かに何度も体当たりしている。
「よーしよし、いいこだから動くなよハロ」
そっとハロを抱きかかえてから、先ほどまでハロに体当たりされていた物に目をやると、
「うわっ?!あ、アレルヤぁ・・・?」
眠るように倒れているアレルヤは汗をかいていて暑そうだ。
「おいアレルヤ、大丈夫かっ?」
声をかけながら服を緩めてやろうと触った瞬間、俺の腕はアレルヤにつかまれた。
一瞬だけだったが、どこか怯える子供のような反応に腕の痛みが遠いものに思えた。
「・・・・・・なんだ、テメェか」
「そういうお前さんはハレルヤのほうか。どうしたんだよ、そんな暑そうな服着て?」
「あぁ?んなもん制服だから・・・っ、ニールっ?!」
「っ!」
名前を呼ばれたのに驚いて俺の手は咄嗟にハレルヤの口を塞いでしまった。
そうしてしまったあとに気がつく。
適当に誤魔化せばいいだけだったことに。
離せよ。
そんな目で見られて俺は苦笑しながらハレルヤを離す。
「なんで・・・知ってるんだ?俺の名前を」
「・・・ヴェーダで知った。そういうことにしとけ」
「お前さんなぁ・・・。まぁ知られちまったものは仕方ない。他の皆には内緒な?」
人差し指を口に当てながらウインクをひとつしてみせれば、
「うざっ」
などと言われてしまった・・・。
「で?此処は、どこだよ、ロックオン」
ゆっくりと確認するように質問してきたハレルヤに俺はまた苦笑をこぼす。
「俺たちの組織の所有する島に決まってるだろ?整備を待つ間の休暇ってとこだな」
「・・・そうかい。んじゃ戻んぞ」
俺の肩を支えに起き上がるとハレルヤはコンテナのある方向に足を進める。
「そうだハレルヤ、お前さん・・・ヴェーダにアクセスとかできる・・・んだよな?
ハロの調子が悪いんだが・・・俺じゃ治してやれそうにないんだ。治せるか?」
おやっさんもいないしダメならティエリアに聞くしかない。
しかしそれでもダメだったとたら・・・。
腕の中で小刻みに震える相棒を撫でていると、
「・・・できることぐれぇはしてやるよ」
とぶっきらぼうなハレルヤの言葉が聞こえた。
「あ、ああ!あんがとなハレルヤ」
それから俺は歩いている途中にアレルヤはどうしてるんだと聞いたが、
眠ってるとだけ返ってきて、俺は笑った。
ハレルヤも刹那とおんなじ・・・話しかければちゃんと応えてくれる、
不器用だけど優しい奴なんだと分かったのが嬉しかったからだ。
なんとなくだが、今回の休暇はいつも以上に楽しくなりそうだと・・・そう思っていた。
「・・・・・・ライル」
まるで、鏡に映したかのようにそっくりな弟の姿を見た瞬間、
なにか・・・冷たい風が心に吹きつけてきたのを感じた・・・・・・。