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リヲ(スランプ中)
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時の狂ったその島で

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「・・・兄さん」

「ライル・・・、どうして、ここにいるんだ・・・?」
顔は笑ってるくせに、目だけが焦っているのがなんだか悲しくなった。
汚い仕事全部自分ひとりで背負った姿を見られたくなかったんだろう・・・。

「あ・・・、あの、ロックオ。ひとまずコーヒーでも飲みませんか?貴方も・・・」
ふんわりと高めの声が凍りついた空気を溶かしていく。

二人きりじゃなくて良かった。
そんなことを普通に思ってしまうあたり、なんて俺は冷たいんだろうと思えた・・・。



向かい合わせで座って見る兄さんは落ち着かない様子でハロを膝の上に乗せたり横に座らせたりしている。
「・・・吸う?」
何を話したらいいのかも思いつかず、とりあえずタバコを勧めてみると兄さんは苦笑して受け取る。
火を点けてやると慣れたように燻らす。
「・・・タバコ、吸うんだな」
「兄さんもな・・・」
タバコを吸う理由のひとつが思い浮かんだが、それは思考の片隅に追いやってしまおう。
今では俺も同じことをしているのだから。

無言でタバコを燻らしているとアレルヤが淹れたてのコーヒーを持って戻ってきた。
「ありがとなアレルヤ」
「どういたしまして」
礼を言ってカップを受け取ると兄さんも遅れて礼を言ってから受け取る。
「・・・アレルヤはその、ライルとは知り合いだったのか?」
「・・・いえ。でもハレルヤは知っているようだったから、僕も知っているんだと思います」
困ったように答えてからちびちびとコーヒーを口にしていたアレルヤは思い出したように口を開く。
「そうだ、ロックオン・・・なんだか水の出が悪いようで・・・今ハレルヤが調べてくれてるけど・・・難しいみたいで。
それで刹那がティエリアを呼びに行ってくれてます」
「そっか・・・飲み水がなくなったりしたら厄介だな」
「サバイバルは慣れているので任せてください」
「ははっ、アレルヤは凄いな」

のほほんと会話を交わすアレルヤと兄さんを見ながら俺は一服していたら刹那が戻ってきた。
後ろを付いてきたティエリアはなぜだがイライラしているようだ。

「ロックオン・ストラトス!なぜその不審者を拘束すらしていないのですかっ」
ビシッと俺をまっすぐに指差すティエリアを兄さんが慌てて宥める。
「落ち着けティエリア。こいつは・・・ライルは俺の弟で不審者じゃないんだよ」
「弟・・・?では、なぜその弟が此処にいるのですかっ?!」

「そりゃこの島一帯を覆った磁気嵐のせいだ」

そう言ったのは俺と同じソレスタルビーイングの制服を着た、ハレルヤだった。
「磁気嵐だと・・・?」

この島と周囲の海をぐるりと囲んだ特殊な磁気嵐。
それのせいでハロを含めた機械系等が狂ってしまったらしい。
そして、どういうわけか俺たちは未来から落ちてきてしまったのだとハレルヤは淡々と説明した。

そんな話は当事者の俺でさえ信じられないが・・・それならば辻褄も合う。
なぜアレルヤの髪型が昔に戻っていて、刹那が幼くなっているのか。

そして・・・兄さんが生きていること。

それもすべてはタイムスリップしたと考えれば納得がいく。

「ってことはライル・・・お前今、」
「あ、ああ!31になる。そうは見えないだろ?これでも肌とか気を使っててさ」
「あ・・・そうだな。そうは見えない」

兄さんが言わんとしたことなんて想像するのも簡単だ。

なぜ ソレスタルビーイングに所属しているんだ ?

分かるものだから、俺はごまかした。

「本当に・・・ライルなんだな」
ぺたりと俺の頬に触れる兄さんの手は手袋越しでも分かるくらいに小さく震えている。
兄さんは何かを悟ったのかもしれない。そうだとしても俺は何も言えなかった。


コーヒーを飲み終わる頃にはティエリアとハレルヤの話も終わったようで、そのついでに俺の疑いも晴れた。
「磁気嵐がなくなる、もしくは自力で一機でもガンダムを修理しないと島の外には出られない。
ってそんなのアリかよ・・・」
カレルは今は使い物にならないしハロだけでは時間がかかる。
「当面の食料に関しては保存食などがあるから問題はないだろう。
しかし・・・こうしてい今にもヴェーダからミッションが入ってきたとしたら・・・ああ」

ヴェーダにアクセスできないのは7年前のティエリアには耐え難いことのようで椅子に力なく座っている。

アレルヤも落ち着かないようでハレルヤと私室に行ってしまった。少し震えて見えたのは気のせいだろうか?

刹那はまったく動じていないのかナイフの手入れをしている。

兄さんは兄さんでティエリアを落ち着かせようと声をかけている。
昔から兄さんはいつでも、どんな時でも自分より他人の心配だったっけ・・・。
・・・俺はそんな兄さんが・・・・・・、

ふいに刹那は椅子から立ち上がると外へ出ようとする。
「おい、刹那どうした・・・?」
「・・・飲み水を探しに行く」

こういう時でも冷静な瞳は変わらないんだなと信頼に似た感情が沸いてくる。
「・・・俺も手伝うよ、刹那」

刹那の言うとおりに飲み身は重要だ。
ただ・・・それよりも兄さんと一緒にいたくなかった。

何を話せばいいのかまだわからないから・・・。

「刹那っ、ライル・・・っ!」
呼び止める兄さんの声に刹那は立ち止まり振り替えるけれども俺は背中を向けたまま。
「あ・・・、もう・・・暗くなっちまうし、明日にしようぜ?」
どんどん小さくなってしまう兄さんの声を聞いて情けないと思った。

「・・・刹那。兄さんの言うとおりかもしれねぇし、明日にしようぜ?」
「・・・わかった」
コクンと頷く刹那に兄さんから安堵の息が聞こえる。
「・・・ありがとな、ライルも」
「いいさ、夜は確かに危ないし・・・な」

そう・・・情けなかった。
まともに話すらできなくて、その上兄さんにあんな辛そうな声を出させてしまった自分が。
辛そうに笑う兄さんも、見るのは嫌だった。