時の狂ったその島で
ガンダムのあるコンテナのほうに歩いていると、
「ロックオン ロックオン?」
ころころと足元に転がってきたハロを拾い上げる。
「残念ながら俺は兄さんじゃねぇよ。また見間違えられたな・・・」
とは言ってもそれは未来での話で今のハロのことじゃないのだが。
「ハロ マチガエタ ゴメン ゴメン」
「いいよ、もう気にしてない。ティエリアはどこにいるか分かるか?」
「ハロ ティエリア オテツダイ オテツダイ」
"手"を伸ばしてハロはひとつのコンテナを指差した。
「エクシア シュウリ シテル」
「エクシア・・・」
当時の刹那の機体で、兄さんの最期を見た機体だ。
おそらく隣のコンテナにはデュナメスが格納されているのだろう。
「ティエリア!」
「ロックオン・・・?いや、ライル・ディランディか。なぜ一人でいる?ハレルヤはどうした」
「あ・・・それは・・・」
しまった。この頃のティエリアは手厳しいんだった。
「ハレルヤは・・・、」
「ハロ タノマレタ ハレルヤ ニ タノマレタ」
「! そうなんだよ、ハレルヤが用事ができたからってさ。そんでハロが俺の見張り役ってわけ。な?ハロ」
「ハロ ミハリ ハロ ミハリ」
ジロリとティエリアに睨まれ背中に冷や汗が走るが、なんとか納得してくれたようだ。
「それで、なんのようだ?」
「今からみんなでメシでも作らないか?」
「今は修理が最優先だ。食事がしたいのなら各自で判断すればいい」
「・・・まぁそうなんだけどさ」
明日には磁気嵐が収まるかもしれないなんてさすがに言えないしな・・・。
そもそも言っても信じてもらえないだろうし。
「でも休養を取るのも大事だと思うぜ、俺は」
「・・・・・・だが」
「その代わりに俺もあとで手伝うからさ。デュナメスの整備なら俺にもできるし」
これでもダメだったら奥の手の兄さんに頼るしかないが・・・。
「・・・君に手伝ってもらわなくとも俺一人で問題ない」
やっぱダメか・・・。
「しかしこのまま君にそこにいられたら機密を見られることになる。だから・・・協力しよう」
「あ、ああ!あんがとなっ」
「すぐに行くから先に戻っていろ」
そう言ってティエリアはてきぱきと工具を片付け始める。
片づけを手伝うといってもまた睨まれそうだし・・・さっさとハレルヤを捜しに行こう。
「待ってるぜ、ティエリア」
「ハレルヤー?まだ怒ってんのかー?」
早く戻らないと兄さんたちが料理を始めてしまうかもしれないしティエリアには大目玉を食らうことになる。
「ハロはハレルヤの居場所分かるか?」
なんて聞いてみたもののこの磁気嵐の中じゃGPSも機能していないだろう。
そんな中普通にハロが動けてるだけで奇跡なんだ・・・無理は言ってられない。
目をチカチカさせてハレルヤを捜してくれているハロを撫でてもういいよと告げる。
「アレルヤに脳量子波で捜してもらうかな・・・」
「ハロ サガス ハロ サガス」
「ハロ・・・」
ころんと腕の中から転がり落ちたあとハロは森の中へと転がって行ってしまう。
「おいおい、待てよっ」
転がっていくハロを追いかけている途中でハロが急に消えた。
「ハロっ?!大丈夫か、ハロっ」
どうやら段差があったようで。
下を覗くとハロが・・・・・・寝ていたらしいハレルヤの上に乗っていた。
「・・・・・・大丈夫か?」
「ダイジョーブ ダイジョーブ」
「そっか、良かった。あ・・・ハレルヤは、大丈夫か?」
とりあえずハロをハレルヤの上から退けようと下に下りた時にハレルヤが起き上がった。
「・・・テメェ、この丸・・・」
「ちょ、ちよっと待てよハレルヤっ、ハロにも悪気があったわけじゃ・・・」
ハロが壊されるなんて心配が頭をよぎったが、
ハレルヤはたまに俺がするようにハロを上に投げてはキャッチするを繰り返すだけだった。
「アーーーッ」
「なんでテメェは俺によくぶつかってくるんだよ」
「ハレルヤ ドンマイ ハレルヤ ドンマイ」
「アレルヤみてぇなこと言ってんじゃねーよ。・・・で?」
「は?・・・ああ、怪我ないか?それと・・・笑ったりして悪かった」
ごめんなと笑いかけると小さく舌打ちされた。
「そっちじゃねーよ。俺の事呼んでたのはは何だって聞いてんだ」
「・・・聞こえてたんなら来てくれよ」
「ヤダね」
生意気そうな態度はどう見てもアレルヤと同じ顔には思えない。
気を取り直して・・・。
「今みんなでメシ作ってるんだがアンタも来てくれないか?」
「仲良しこよしかぁ?すんなら勝手にしろよ、俺はヤだけどな」
言うと思った。しかし残りはハレルヤだけなんで、ここで諦めたくはない。
「・・・帰ったら俺の持ってる酒やるからさ」
両手のひらを合わせて頼んでみる。
「・・・兄弟そろってウザいな。・・・じゃ、コレで済ませてやんよ」
「っ!?」
すっと俺の前に伸ばされた手にまた殴られると反射的に目を瞑ってしまう。
「これで、な」
けれどいつまで経っても痛みは襲ってこず、恐る恐ると目を開けるとニヤニヤ笑うハレルヤの手には俺のライター。
「ハレルヤ、それっ」
「仲良しこよし、したいんだろ?」
「・・・わかったよ。その代わりちゃんと頼むぜ?」
返事を待っても仕方ないと俺はハレルヤの手からハロを取り返すと来た道を戻った。
時折、後ろを振り返るとハレルヤはちゃんとついて来てくれている様でホッと胸を撫で下ろした。