時の狂ったその島で
楽しい時間というものは本当にあっという間に過ぎてしまう気がする。
あんだけ楽しかった、つっても兄さんと俺とアレルヤくらいしか談笑もしなかったが・・・。
料理で彩られていた机も今はすっかりと片付けられてしまった。
・・・あ、なんかこの空しさってガキの頃のクリスマスの後みたいだ・・・。
楽しい時間が終わってしまうのが嫌で眠りたくないとよく駄々をこねていた。
そんで・・・・・・。
「ライルさん、もうお皿下げても大丈夫ですか?」
「あ、ああっ。悪いなアレルヤ」
「どういたしまして」
使い終わった食器を片付けるアレルヤに無理やり手伝わさせられているハレルヤ。
ティエリアはまたエクシアの整備に戻ってしまったし兄さんは刹那と何か話している。
とても穏やかなのに、明日になったらもう終わってしまうんだと思うと・・・切なくなった。
戻りたくないなんて思いはしない。それでも寂しい気持ちは収まるどころか広がっていく。
すぐ側で笑っている兄さんがすでに死んでいるなんて・・・
「ライル、どうした?」
認めたくないよ・・・・・・。
「・・・なぁハレルヤ」
「あ?なんだよ」
「少し話があるんだ。いいか?」
「・・・アレルヤ、呼ばれたからあとは頼んだぜ」
「あ・・・うん、わかったよハレルヤ」
「で?なんのようだよ」
人気のない森の奥深くまで歩いてきた所でずっと黙っていたハレルヤに声をかけられる。
「・・・・・・ハレルヤ。俺たち明日には帰るんだよな?」
「なんだ・・・?帰りたくなくなったか?」
クク・・・と背中越しにハレルヤの笑い声が聞こえる。
「そうじゃないさ。いつまでも過去に縛られていたって・・・。
でもよ、こう思っちまうんだ・・・今なにかすればもしかして兄さんは・・・ってさ」
「・・・・・・」
「・・・けどよ。仮に兄さんが助かったとしても・・・・・・」
たくさんの命を奪ってきた俺たちが・・・俺が自分の家族を救いたいだなんて。
「好きにしろよ。お前が何をしても何もしなくても死ぬ奴は死ぬし、死なない奴は死なない。
俺は助けたい奴は自分のエゴで助けるぜ?他人が何を言おうとな。
で。お前はどうしたいよ?偽善ぶった考えなんて捨てて素直になってみろよ」
「・・・だって、アニューは助けられないだろ?兄さんを助けてもしも成功しちまったら俺はアニューもと望んじまうかもしれない!
それでダメだったら・・・そしたら俺はきっと嫌いになっちまう!憎んじまう・・・。
そんなのはもう嫌なんだ!もう・・・・・・嫌なんだ」
泣いてはいない。涙なんて久しく流れてもいない。
なのに俺は俺を見られたくなくて、手で顔を覆ってしまう。
また胸が寂しいと痛みを持って訴えてくる。
「・・・・・・じゃ何もすんな」
「っ」
「そうすりゃあそんな絵空事に悩まなくても済むぜ?それにどーせ女のほうだけ助けられても同じこと言うんだろ?
ああ・・・でもソレは嫌なんだったな・・・なら簡単だ、見殺せばいい」
「―――ッ!」
振り向いて見たハレルヤの目はとても落ち着いていた・・・。
「すべて救えるなんて傲慢だ。だがな、チャンスを手放すのはバカのすることだぜ?」
その後はどうやって部屋に戻ったのか覚えていなかった。
一人で戻ったのか、あるいはハレルヤが連れてきてくれたのか。
「・・・帰んのは明日なんだよな・・・」
リミットはあとわずか。
俺は・・・・・・どうしたいんだろうか?