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中野コブクロ
中野コブクロ
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11/28新刊?サンプル

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 帰りのホームルームを終えると、静雄は鞄を手に急いで教室を出た。本当は走り出したいくらいの気分だったけれど、ぐっと堪えて我慢した。浮かれている所を人に見られるのは恥ずかしかったからだ。
 早く家に帰って、田中先輩に電話を掛けたい。
 そう考えるだけで、そわそわと気が逸った。そのためにはまず、電話を掛ける練習をしてみなくては。幽はもう家に帰っているだろうか。帰っていたら、電話応対の練習相手になってもらおう。
 そんな事を考えながら、靴を履き替え校舎を出る。
 少し早足で校門に向かいつつ、静雄はふと振り返って背後の校舎を仰ぎ見た。十五時四十三分。校舎のてっぺんに掲げられた大きな時計が指すその時刻に、静雄はぴたりと足を止めた。
 時計から更に視線を上げ、空を見上げる。当然だけれど空はまだ明るく、日が沈むまでには随分とかかりそうだった。
 こんなに明るいうちから電話をかけた所で、きっと彼はまだ帰宅してもいないだろう。
 彼の通う高校は、池袋から数駅先にあるのだと聞いた。通学時間も中学に通っていた頃よりはずっと長くかかるだろう。それに彼は、高校に上がったらバイトをして金を貯めるんだとも話していた。もうバイトを始めているとしたら、帰宅するのは夜になってからかもしれない。
 再度ちらりと時計を見る。
 仕方ない、家に帰って勉強でもしながら夜を待とう。僅かに肩を落としながら再び校門に向かって歩き出した静雄は、ある事を思い出して、あ、と小さく声を上げた。
 そういえば、数学の問題集が切れていたはずだ。
 鞄を漁り、財布の中身を確認してホッと息を吐く。財布には、小遣いの残りが三千円程入っていた。
 参考書や問題集などについての出費は、レシートを持って帰れば母親からその分貰える事になっていた。取りあえずはこれで問題集を買って、それから家に帰ろう。そう決めると、校門を出た静雄の足は自宅と逆の方角に向かって歩き始めた。
 静雄の通う来神中学から一番近い繁華街が池袋だった。自宅から徒歩で行ける範囲の一番大きな書店も、当然その池袋にある。徐々に近くなるサンシャイン60のシルエットをぼんやりと見上げながら、池袋の街に足を踏み入れるのが随分と久しぶりである事に気が付いた。
 ここしばらくはずっと、学校が終わるとすぐに家に戻り机に向かっていたからだ。他の事に気を取られる暇などなかったし、潰す時間も無かった。一年の時の遅れを取り戻す事に必死だったのだ。トムと同じ高校を目指すために。
 久しぶりの池袋は相変わらずごみごみとしていて、平日の昼間だというのに通りは人で溢れていた。
 人混みは苦手だった。目立つ金髪のせいで人の注目を浴びる事も多かったし、そのせいで余計なトラブルを招き入れてしまう事も少なくないからだ。
 さっさと目的のものを買って、家に帰ろう。
 早足で目指す書店に向かいながら、静雄は人混みから目を逸らすように目線を下げて歩いた。
 東口五差路の信号を渡り、明治通りには向かわずそのまま直進する。この通りを抜けた所に、目指す書店はあった。
 問題集を買って家に帰り、勉強をしたり夕食を取ったり幽を相手に電話を掛けた時のシミュレーションをしたりしよう。そうすれば、あっという間に夜になるに違いない。そわそわと逸る気持ちを落ち着かせるように、そんな事を考えながら静雄は書店へと向かう歩調を更に早めた。
 と、不意に下げた視界の先に幾つもの足が立ち塞がった。
 顔を上げると、この近くの高校の制服を着た男達が道を塞ぐようにして立っていた。
「よお、久しぶりじゃねぇか」
 真ん中に立つ男が、ニヤニヤと笑いながら静雄に一歩近付いた。左の耳に五つもピアスを嵌めているその男の視線は、まっすぐに静雄へと向けられている。
 見覚えのない顔だ。
 けれど、相手は静雄の事を良く知っているようだった。笑っている表情を裏切るように、見下ろす目が冷たい。
「最近見かけねェからよォ、もうブクロにゃ来ねェのかと思ってたぜ」
 つーか、と歯を見せて笑いながら、男は静雄の金髪をぐいと引き掴んだ。
「─────この頭、生意気だから染めて来いって言わなかったっけ。墨汁でもブッ掛けてオレが染めてやろうか?」
 男の声に、背後の仲間達がげらげらと笑う。
 耳障りなその声と、金髪を強く掴む男の手の力に、何かがプツリと切れる音を耳の奥に聞いた。