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フランケンシュタインの怪物

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あいつが帰って来ない
何も言わずに出て行ったきり、どれくらいの時間が経ったのか
俺の弟だといい、俺に自分の記憶が無いことを嘆いていたあいつ
最初のうちはいつか俺の記憶が戻るんじゃねえかと期待していたようだが、最近じゃ暗い目をして俺を見つめるばかり
気の毒だし、可哀想だから思い出してやりてえのはやまやまだけど、何をどうしたって思い出せねえもんは思い出せねえ
家の中全体が重い雰囲気で、息が詰まって仕方無かった
だからあいつが久しぶりに外出する気になったらしいのはいいことだと思った
たまには外の空気を吸わなきゃ、内に篭り過ぎてちゃ開ける展望も開けねえ
まあ、それは俺も同じだが、どうも外に出る気は起きなかった
静かに閉ざされたドアを見て、俺はここで俺に出来ることをすることにした
…といっても大して出来ることがあるわけじゃない
かつての俺が残したもの(とあいつが呼ぶ細々としたもの)を手に取り、眉をしかめ、元の場所に戻す
その繰り返しだ
記憶も、もののように手にとって眺めることが出来ればいいのだが
甲斐の無い行為に少々疲れた俺が本棚に凭れかかると、おかしなことにずり、とそれは動いた
慌てて本棚を確かめる 
するとどうやら本棚を横にずらすと後ろにも棚があるようだった
隠し棚だ
俺は早速本棚を動かし、奥の棚を確認した
どうやらそこにも何冊かの本、いや冊子があるようだった
薄く埃が降り積もっているところを見るに、どうやらあいつもこれの存在は知らなかったらしい
かつての俺とやらが密かに隠していたものだろうか?
俺は微かな興奮を覚えつつ冊子を開いた
几帳面な字で綴られた日付と文章
どうやらそれは日記のようだった
それはつまり、手にとって眺めることが出来る記憶だ