【ヘタリア】兄さんが消えない理由 マリエンブルク城篇2-2
「迷惑をかけたっていうのが間違いなんですよ!!「国」は存在してる限り、お互いに迷惑をかけあうんです!!同じ世界に住んでいるんですから、何かしら触れ合って当たり前なんです!それが迷惑だろうと親切だろうと、なにも変わらない!!かかわって一緒に生きていくのが本当でしょう!!「国」であって、「人」なんだから!!
お互いに生きて行く間に、喧嘩したり、迷惑かけたり、一緒に笑ったり・・・生きてれば、なにかあるんです!!消えてしまったら、それは全部無くなってしまう!!」
「・・・・・俺は、もうこいつにとって、必要じゃねえ!!」
(・・にい・・・さん・・・そんなこと・・・)
静かに眠りの中で、二人の声を聞いていたルートヴィッヒが目を覚ました。
「弟さんがそう思って、あなたに言いましたか!?そう言いましたか!?あなたなんていらないって!!そんなこと、一度だってないでしょう!!
あなたの負担になるようなことは、何もしなくてもいいから、自分のそばにいてくれるだけでいいって思ってるから、仕事だって、ドイツさんが一人で頑張ってるんでしょうが!!」
「こいつは言わねえんだよ!!苦しい事も、つらい事も、俺にはよ!俺はいらねえじゃねえか!」
「あなたがそう教えたんでしょうが!!あなたが他人につらい事とか、言わないからでしょうが!それを見て育ったドイツさんが言うわけないでしょう!!ましてや、あなたの事をいっつも心配しているドイツさんが、あなたに自分はつらいなんて言えるわけがない!」
「くそ!!何もかも、俺のせいかよ!!」
「ええそうです!!そうに決まってます!!あなたはドイツ騎士団の時代からなんにも変っちゃいない!!強引でわがままで自分勝手で!!」
「悪かったな!」
「だけど、みんなあなたをほっとけないんでしょうが!!」
その時、突然、ルートヴィッヒが起き上がってきた。
「・・にい・・さん・・・。」
「ドイツさん!!大丈夫ですか?」
ルートヴィッヒは頭をふって、意識をはっきりさせようとしているようだ。
「・・・・にいさん・・・」
「ああ、なんだ?ヴェスト。」
「・・兄さん・・・俺もそう思う・・・・。」
「・・・・・?」
「俺も・・・・・兄さんがどういう存在なのか・・知りたい。」
「ヴェスト・・・・お前・・・。」
「俺も思ってた・・・。兄さんがなぜ消えずにいられるのか、どうしていまになって、消えようとしているのか・・・・。俺は知りたい・・・。兄さんが消えるのはいやだ・・・。」
「じゃあ、まず食事してください。ドイツさん。何も食べていないでしょう?ついでにお兄さんには、今の城の概要を渡しますから、仕事してもらいます!」
「なんだよ!お前!!」
「いいですか!!ギルベルトさん!!あなたもしゃきっとしてください!!俺たちと戦ってた時の城にいくんですから、昔の仲間に恥じないようにこの仕事、死ぬ気でやってもらいます!!」
「ああ、俺も協力する。兄さん、働いてくれ。」
「お、お前ら!!急にタッグ組みやがって!!」
そこへフェリクスが飛び込んできた。
「食事出来たし!!いったいいつになったらみんな来るし!」
「ああ、ポー。ドイツさんも起きたから、みんなで食べよう!」
「こら!無視すんな!!」
「なんだ!元気でたし!」
「とたんにうるさいけどね。」
「お前ら・・・覚えてやがれ!!」
「ええ、覚えてますとも!!あなたの謎が解明されたら、たっぷりと仕事してお返ししてもらいますからね!!」
ギルベルトは泣きそうになった。
(ああ、みんな・・・すまねえ・・・・。こんなに心配させちまってな・・・。)
そのあと、皆でわいわいと食事をした。
ルートヴィッヒとフェリクスは仕事の話で盛り上がっている。
ルートヴィッヒも、もう大丈夫なようだ。
トーリスはギルベルトをたまに横目でみるが、もう何も言わなかった。
皆、明日に備えて部屋で休むことにした。
「じゃあ、お休みなさい。あしたは朝9時には城の内部に行きますから。ああギルベルト君、ちゃんと資料に目を通しておいてくださいね!」
「くっそ、わかってるよ!!目を通しときゃいいんだろ!!」
「お休みなさい。」
「お休みなさい。今日はありがとう。迷惑かけてすまなかったな。」
「気にしないでください。」
「ゆっくり休むしー!」
ルートヴィッヒとギルベルトは部屋に戻る。
さっき思いっきり言いあったせいか、二人きりになるとちょっと照れくさい。
「じゃあ、俺、先に風呂はいるかんな。」
「ああ、わかった。」
ギルベルトが風呂に入るのを見届けると、ルートヴィッヒは電話を手にして、かけ始めた。
「おい上がったぜ。お前も入れよ。ヴェスト。」
「ああ、兄さん。そうだ、トーリスから預かった書類を渡しておくな。」
「お前まで・・・・。急に働けってなんなんだよ・・・まったく・・・。」
ルートヴィッヒが風呂からあがって出てきた時、ギルベルトはソファに腰かけて、うとうとと眠っているようだった。
「兄さん、髪がぬれてるぞ。乾かさないと風邪をひく。」
ギルベルトが目を開けた。
「あ?ヴェスト・・・・・?ここ・・・・どこだ・・・?なんで俺、こんなところにいるんだ?」
「!」
ルートヴィッヒはショックを受けたが、なんとか押し隠した。
「しっかりしてくれよ。兄さん。寝ぼけてるのか?ポーランドのマリエンブルク城の前のホテルだろうが。明日、城の内部の調査にいく。」
「あ・・・・・ああそうだったな・・・。はは、寝ぼけちまったか・・・。」
「髪がぬれたままだ。ドライヤーをとってくれ。」
「なんだよ。お前が乾かしてくれんのか。」
「ああ、たまにはな。」
ドライヤーで兄の髪を乾かしながら、ルートヴィッヒは涙をこらえる。
ここ最近ずっと上の空だった兄。
自分にそのことを知られまいとして必死だった兄・・・・・・。
さっき、アントーニョと電話で話すと、やはり兄は、一度眠ると、その前の事をまったく覚えていないのだった。
これまで、自分に悟られまいと、どのくらい兄は努力してきたのだろう・・・・。
どうして、そのことに気がつかなかったのか・・・。
すぐに気付いて、一緒にどうすればいいのか考えていれば・・・・。
いや、今からでも遅くはない。
俺は兄さんを消すつもりはない!
「乾いたぞ。兄さん」
「ん、ありがとうな。えへへ、久しぶりだなあ。お前と同じ部屋で寝るなんてよ。」
「・・・ああ、そうだな・・・・。俺が小さいころまでは一緒だったな・・・。」
「・・・小さいころ、可愛かったぜえ!ヴェスト!!今も可愛いけどな!」
「こんなでかい図体してるやつに、可愛いなどと・・」
「へへ、いいじゃねえか!いつまでたってもお前は俺にとっては可愛いヴェストだ!!」
「・・・じゃあ、その可愛い弟から、兄さんにお願いがある。」
「なんだよ?ヴェスト。」
「・・・・もう一度・・・・歌ってくれないか・・・・俺が眠るまで・・・・。」
「歌う・・・・もう一度・・・・・。」
ギルベルトは一瞬、戸惑う。
作品名:【ヘタリア】兄さんが消えない理由 マリエンブルク城篇2-2 作家名:まこ