銀沖ログ詰め合わせ
「…………ねぇ沖田君」
「はい、何でしょう旦那」
「いや何でしょうじゃなくてね?」
大きな目をこちらへ向けて、ゆるりと首を傾げる様をみて、本当に無意識でやっているのかと少し苛立つ。
こちらは先程から居心地の悪さをひしひしと感じているのに。
はあとわざとらしく大きな溜息を目の前で吐けば、小柄な少年はあからさまに眉を顰めた。
それをちらりと横目で見て、少しばかり満足する。
そうしているとびゅうと風が吹いて、少年の髪がさらさらと揺れた。
くせの無い髪は風の悪戯にもされるが儘だ。
さらり、さらり、
羨ましいと思ったそのままに、さらり、髪を掬うと、音もなく指先を抜けて行ってしまった。
「沖田君の髪は綺麗だね」
「羨ましがってもあげませんぜィ。つか旦那の髪は…」
そこでまたじいと見詰められて、成る程さっきは、其処を見ていたのかと納得する。
見下ろした視線の先、次の言葉を紡ぐ瞬間、ぱかりと開いた口にあ、と思った。
「くるくる天パ。風が吹こうがびくともしねぇ。屈強ですねィ」
人の神経を逆撫でする言葉と、それを放つ唇に、仕置きとばかりにがぶりと齧り付いた。
傾けた身体、視界の端、微かに映った揺れる髪。
さらり、さらり、
音もなく舞い踊っていた。