二次創作小説やBL小説が読める!投稿できる!二次小説投稿コミュニティ!

オリジナル小説 https://novelist.jp/ | 官能小説 https://r18.novelist.jp/
二次創作小説投稿サイト「2.novelist.jp」

春の目覚め ・2

INDEX|2ページ/7ページ|

次のページ前のページ
 

 弾き飛ばされたイギリスの拳銃から、空に向かって弾が発射されていた。
 体勢が戻せないイギリスたちを放置し、プロイセンはイタリアの元へと駆け付ける。
「イタリアちゃん! 危ねぇ真似すんなって!」
「だって、プロイセンがイギリスたちに囲まれてたから、なんとかしないとって…」
 拳銃を握ったままの腕を下ろし、イタリアはおろおろと必死に弁明をしようとしていた。
 そのあまりに必死な様子に、プロイセンは思わずいつもの高笑いをしそうになるのを寸前で堪える。
「俺様は大丈夫だぜ。ありがとな、イタリアちゃん」
 宥めるようにそう言って、イタリアの頭を撫でた。その途端、イタリアがぼろぼろと涙を澪し、プロイセンを慌てさせる。
「ぅえぇぇ? 俺が撫でたのが悪かったのか!?」
「ちが、違うんだ…。俺、やっぱり、足引っ張ってばっかで…。結局、守ってもらってるし…。本当に、役立たなくて…。ドイツが、…ドイツが酷い目に合ってる…かも知れない、のに…」
 えぐえぐ泣きながら、イタリアは辿々しく言葉を紡いでいく。プロイセンは、そのイタリアの言葉に何を感じ取ったのか、反射的に彼の両腕を掴んでいた。
「ヴェストが、どこにいるのか、知ってんのか!?」
「ぅひ!? プ、プロイセン、怖いよぉ…」
「わ、悪りぃ…。それで、イタリアちゃん」
「あ、うん…。そこで、レジスタンスに捕まっちゃって…」
「…は?」
 そこで、とイタリアは自分の後方を指さした。
「ええと、レジスタンスに捕まっちゃったけど、俺がイタリアだって知ってる奴がいたみたいで、なんか、解放してくれたんだ」
「………」
「ただ、ドイツの次に偉いやつに会わせてくれって、必死に言う奴がいたから、俺、プロイセンを探してたんだよ。そしたら、プロイセンが囲まれてて…それで…」
 言いながら、イタリアはぼろぼろと涙を澪し続ける。
 プロイセンは、イタリアのかなり後方にある茂みに上手く姿を隠していたレジスタンスと思わしき存在にようやく気づ付いた。
「ドイツの次に偉いやつに会わせろ、ね…」
 ドイツの素性を知っている人間がレジスタンスにいるということか?
「イタリアちゃん、そいつに――――、」
「プロイセン…!」
「くそったれがぁ!」
 イタリアと悠長に話をしている状況ではなかったことをようやく思い出す。
 背後に忍び寄って来ていたイギリスにプロイセンは一瞬で身を翻し、蹴りをお見舞いする。しかし、躱された。
「あっぶねぇ…!」
 ぎりぎりのところで蹴りを躱したイギリスが両手を挙げる仕草をしながら後退し、距離を取ろうとする。
「お前なぁ、もうちょっと人の話を聞けよ!」
「てめぇに話すことは無ぇって言ってんだろう!」
 プロイセンは反射的にイタリアの手から銃をもぎ取ると、イギリスに向けて引き金を引こうとした。だが、それよりも先にイギリスに追い付いてきたアメリカの銃撃によって弾かれる。
「っ痛ぅ…」
「プロイセン…!」
 拳銃に銃弾を命中させて弾いてくれたアメリカは「格好良いだろ!」と言わんばかりに誇らしげだ。その前でプロイセンは弾かれた衝撃で痺れを訴える左手を押さえていた。イタリアが状況の悪化に怯えた声を出すだけでおろおろとしている。今にも白旗を振り始めそうな雰囲気だが、白旗を出すことはなかった。もう、白旗を振って効果を示す時期は過ぎているとイタリアも理解しているのかもしれない。
「往生際が悪いんだぞ」
 呆れた口調で言うアメリカに、プロイセンは忌々しげに舌打ちするだけだった。
 そんな中、いきなりイギリスが拳銃の照準をプロイセンから外したかと思えば、その後方に向けた。アメリカも勘付いたようで、同様の動きをした。
「おい、そこの後ろに隠れてるやつら、出てこい」
「三秒以内に出ないと撃つよ」
「ちょっと待って…!」
 イギリスとアメリカの言葉に、思わずイタリアが両手を広げてプロイセンとその後方に身を潜めるレジスタンスたちを庇おうとした。
 ぎょっとするプロイセンを余所に、イタリアは声を張り上げる。
「待って、撃たないで! 彼らはレジスタンスだよ! 反政府軍なんだ!」
「レジスタンスといえば、俺たちにとっては味方じゃないか!」
 とはアメリカで、イギリスは「プロイセンがいる前でレジスタンスを名乗るってのはどうなんだ、それ…」と疑い深げだった。
「本当なんだってば! お願い、撃たないで!」
 イタリアは必死に叫ぶ。
 プロイセンは何を思うのか、一度軽く目を閉じ小さく息を吐いた。そして、「イタリアちゃん」と小さく名を呼ぶ。イタリアが振り返るよりも先にその細い肩を掴み、軽く自分の後ろへと下がらせる。
「プロイセン、お願い! 彼の話しを聞いて――、」
「…ありがとな、イタリアちゃん。でも、もう、無茶は止めだ」
「!? …何、言ってんの!? やだよ! 俺、まだ頑張れるよ!」
「もう十分だぜ、イタリアちゃん。もう、イタリアちゃんのお兄様のところに戻れ」
「まだ俺はイタリアだよ! 大丈夫だってば!」
「お兄様のところに戻れって」
「やだってば! プロイセン、何で急にそんなこと言うの!? ねぇ、お願い、俺もドイツ探すの手伝わせてよ!」
「戻れって。いつものように白旗振っていいから――」
「嫌だって言ってるだろう!」
 プロイセンの言葉を遮り、イタリアは大声を張り上げる。プロイセンの顔から表情が消えた。そして、静かに淡々とした言葉が発せられた。
 イタリアはまた泣き出しそうになりながら、目の前に立つプロイセンを見つめた。
「もう、この国は正常に機能してねぇ。このまま俺らに関わってもろくなことにはならねぇよ」
「そんな、こと、言わないで…。お願いだよ。俺を遠ざけないで。ドイツを俺も探すから…」
「イタリアちゃん。戦闘時での引き際は大事だぜ」
「やだってば!」
 プロイセンは再度イタリアの肩を掴むと、その背後にいたフランスへと乱暴な程の力で押し出した。
 つんのめりながらフランスの腕の中に飛び込む形になってしまったイタリアが、プロイセンを振り返り、反論を口にしようとするが、それよりも先にプロイセンが宣言する。
「イタリアちゃんは戦線離脱な。降伏どうのは後で話し合え」
 呆れたようにフランスが肩を竦めてみせて、それから逃げ出そうとするイタリアの両の腕を掴んで「お前が勝手に決めるんじゃないよ。とりあえずは、お兄さんが保護しておいてあげるけど」と言い返した。

「その引き際ってやつを、俺はお前に求めたいんだがな」
 そう言うのはイギリスだった。
「それは無理な注文だって、言ってんだろ」
「プロイセン!」
 イタリアの非難とも悲鳴とも取れる呼び声を、プロイセンは無表情のまま流す。
 さて、一刻も早くどうやってこの状況から脱出するか。プロイセンはイギリスたちを眺めながら考えようとした。その時、再びイタリアが悲鳴のような声を発した。フランスの腕を振り切ろうと藻掻き、叫ぶ。
「ダメだって! お願いだよ、撃たないで!」
 その声にプロイセンも振り返る。茂みから二人の兵士が立ち上がりこちらに向かって歩いてくる姿が見えた。一人は負傷しているようで、もう一人の肩に掴まっていた。
「フランス兄ちゃん、お願い! 撃たせないで!」
作品名:春の目覚め ・2 作家名:氷崎冬花