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ふざけんなぁ!! 2

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少女に怪我させた上、この面を利用して惚れさせたのをいい事に、しでかした事をうやむやにしてしまっているなんて知られたら、絶対軽蔑される。

だから、公園で速攻で食べてしまったけど、胃は苦しかったが美味かったし、愛情篭った手料理に、心はもっと満ち足りた。


嵌らないように気をつけなければ。
相手は八つも年下の子供なのに。
そう自分自身に必死で言い聞かせているのに、帝人の猛攻は半端なくて。

「静雄さん♪ 今日天気よかったから、お布団干しておきました。気持ちいいですか?」
「静雄さん♪ プリンが一番お好きだっておっしゃってたから、頑張ってケーキ作ってみました。美味しいですか?」
「静雄さん♪ 今日はヒノキ風呂にしてみました♪ 入浴剤ってあんまりお好きじゃないって伺ってましたけれど、アロマオイルなので湯船とか汚さないし、それに疲れが取れるんですって。ゆっくりしてきてくださいね♪♪」


そんなに尽くさないでくれ。
俺にそんな価値はねぇ。
お前に怪我させた張本人なんだぞぉぉぉぉぉぉぉぉ!!
ぽけぽけ笑ってんじゃねぇよ、この馬鹿!!


そう何度心の中で叫んだ事か。
でも、帝人の優しい手が、投げかけてくる言葉が、微笑みが嬉しくて。

「静雄さん、大好き♪」
そう事ある毎に言われる度、心臓が跳ねて。

三日目には、もうどうしょうもないぐらいに、彼女に堕ちていた。
この娘が傍にいてくれさえするのなら、もう何も望まないとまで思うぐらいに惚れてしまった。



たった一つ、静雄の手に残っていた幸せだったのに。
それすらあいつは奪いやがった。


「いぃぃぃぃぃぃぃざぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁやぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!」


ズルズルと、止まれの標識を引きずりつつ、頬を涙でぬらしながら新宿に向かう魔人の姿に、池袋の街を歩く人々は、パニックに陥っていた。


★☆★☆★


その頃、田中トムは一人寂しく、露西亜寿司のカウンターで夕食を取っていた。
今日は月に一度の半額DAY。
いつもなら、静雄と会社帰りに寄り、通常なら頼まない贅沢なネタを魚に、美味しく日本酒を傾けていただろう。

だが彼は帝人ちゃんと同棲を始めてから、夜は忠犬さながらまっしぐらに帰宅してしまうので、ここ二ヶ月、一人寂しく呑む日が続いてちょっと切ない。

(……あー、俺もそろそろ嫁さん欲しいなぁ……)

はふっと溜息つきながら、帆立貝を口に入れる。
ネタは新鮮で、噛み締めるととろりとした甘みが舌に行き渡り、旨い。
壁の大理石や、店内のあちらこちらを飾っている【オール時価】の垂れ幕が、最初はとても恐ろしかったが、この特異な店が開店してからもう八年。
下手な店よりぼったくりがない良心会計だと判っているから、トムもずっと常連を続けていられた。


「しかし、本当に最低だね臨也は。そんなに静雄が幸せになるのが、許せなかったのかい?」
「当たり前だろ。だって静ちゃんだよ。化け物にツガイなんて必要ない。あいつは孤独で惨めに死んでく運命以外、俺は絶対認めないから」

(おいおいおいおい!!)

がばっと振り返れば、個室の開かれたふすまの陰から、静雄が『ノミ蟲』と忌避する、折原臨也の黒いファーコートの端が、確かに見えた。
トムは丁度、その部屋の対角線に位置した場所に座っているから、お互いの顔は見えないけれど、真裏だから易々と会話は聞こえてしまう。


「だからって、帝人ちゃんを卑怯な手で彼から取り上げるなんて。人として最低の行為だ。無理強いするのなら、私だって黙ってないよ」
「おいおい新羅、君、いつから静ちゃんの味方になったんだい?」
「私はいつでもセルティの味方だよ。セルティは静雄も帝人ちゃんも、物凄く気に入っていて、二人がこのままゴールインすることを、本気で期待しているんだ。
だから私は彼女の為だけに、断固君の行動に反対する」

じりじりと彼らにばれないように身を近づけつつ、耳をダンボにし、ついでに持っていた携帯を取り出し、音を消しつつボタン操作をする。

トム自身、臨也の事は大嫌いだった。
それに静雄は可愛い後輩で、帝人は不思議ちゃんだが善良で面白い。
二人が仲良く暮らしていたこの二ヶ月、静雄が暴れる率は激減し、池袋は本当に平和だったのだ。

彼の幸せの破壊=自動喧嘩人形の復活


何としてでも阻止しなければ。
幸薄い静雄のささやかな幸福も、トムの平和も終焉である。

息を潜めて携帯の録画ボタンを押す。
何処まで音声を拾えるかは判らないが、やってみなければ始まらない。


「臨也。それで君は帝人ちゃんのご両親に、本当に連絡を取ったのかい?」
「あははははは。新羅、忘れてるんじゃないの? 俺、情報屋だよ。俺に吐かせたかったら金を出しな」
「あははははは。だったら私は闇医者だよ。君が高校の時からずっとツケになっている治療費を、今すぐ払ってもらっても構わないんだけど。あー、今、何億かなぁ~♪」
「……全く、敵わないなぁ……。まぁいいか。今日は特別だ♪」

くすくす笑っている臨也は本当に上機嫌で、酒も結構進んでいる様子だ。
きっと、静雄を陥れた勝利の美酒に酔っているのだろう。
トムの胸にじわじわと、不安ばかりが蓄積されていく。


「正確には、まだ取ってないし、取るつもりもない。そんな事すれば、埼玉に帰っちゃうし。でも、同棲している証拠写真を何枚か抑えてあるし、いつでも郵送はできる状態で纏まっている。
今日学校帰りに帝人ちゃんをとっ捕まえて資料見せたらさ、静ちゃんの家を出て俺の所に来るって条件を、速攻で呑んでくれたよ。
あー可愛かったぁ♪ 涙滲ませた目がさ、こうぎらぎらっと俺を睨みつけてきて。
あーいう反抗的な子、踏みつけて弄って痛めつけて犯して、身も心もボロクズにして捨ててやったら気持ちイイだろうねぇ♪」

「変態。そんなに帝人ちゃんが、静雄の彼女になったのが気に入らないの?」
「当たり前だろ。あの娘は俺がずっと前から目をつけてたのにさ。二年もこの俺が大事に大事に育ててきたのに、東京にのこのこ出てきた初日に静ちゃんなんかにまんまと嵌りやがって。マジ【可愛さ余って憎さ100倍】。俺、静ちゃんのお古なんてゴメンだもん。壊したい、殺したい、あーもう死んでくれないかなあの二人、マジで」

トムの手のひらの中で、ミシリと携帯が軋んだ。

マジであの男こそ、死んでしまえばいい。
臨也さえいなければ、静雄はきっと、今のような臆病な性格にならなかった。
純情で気が良く、優しい男だから、とっくの昔に彼を理解してくれる女を捕まえて、幸せになれていた筈。

もっと傍に寄りたかったが、これ以上近づけばばれてしまう。
ドレットヘアを、空いてた片方の手で掻き毟っていると、ぽんと肩を叩かれた。
振り返れば人差し指を唇に立てたサイモンがいて、そのまま無言でトムの手から、彼の携帯を掻っ攫い、ついでに彼の背を、従業員用の休憩室の方へ押しやる。

(え?)

そして彼は、すたすたと臨也と新羅のいる個室へと向かった。

「Hey、臨也、大トロ20貫追加ネ」
「頼んでないよ俺、そんなにどうしろって!?」
「OH、私日本語ワカラナイ♪」
「嘘付け!!」

作品名:ふざけんなぁ!! 2 作家名:みかる