ふざけんなぁ!! 2
「後一週間しか一緒にいられないんだし、私、今後も静雄さんとは良いお友達でいたいの。お願い、つまんない事で拗らせたくない」
残酷で身勝手な子供のお願いに、セルティはぱたぱたとPDAを振り回して突きつけてきた。
『どうして? 帝人が何で静雄の家を出なきゃならないんだ!?』
「えっと、学校の先生方と、今日取引した結果です。でないと私、親に通報された上、自主的に埼玉の学校に転校しなけりゃならなくなってしまって。まだ池袋から離れたくないんです。私には、やらなきゃならない事が残っているから」
ダラーズを始めてしまったのは、お遊びの軽い気持ちだったとしても、作ってしまったのなら、終焉まできちんと見届けるのが、親の役目である。
門田達も驚天動地で固まっている。
そりゃそうだ。
15歳の少女と、23歳の成人男性が一つ屋根の下で暮らしていたなんて、犯罪だろう。
「え、マジでこの子、シズシズと同棲してたの?」
女はやっぱり強かった。
狩沢の歯に衣を着せぬ問いかけに、帝人がほよっと小首を傾げる。
「いいえ、間借りです」
きっぱり断言した残酷な少女を見て、今までずっと険しい顔をしていた正臣だけど、今度は逆にしょっぱい顔に急変する。
「こいつの精神、まだ未発達のお子様なんで、基本友愛までしか判らないんですよ。この点に関してだけは、俺でも平和島静雄に同情しますね」
「じゃあ、静雄の一人相撲ってことか?」
「はい」
凄く切ない空気が、帝人を除く、周囲一面に漂いだした。
初恋も未経験な少女の場合、その恋愛論は小動物を相手にするのと同じである。
つまり、追えば追うほど逃げる。
逆に臨也のように、罠を巧みに仕掛ければ、ほいほいと入れ食い状態でひっかかるのがこの世代の少女達だ。
純情な静雄が、臨也のように悪知恵を廻らせられる訳はなく、押せ押せの暴走機関車、または猟犬のようなストレートな愛情表現では、まず9割方落とせない。
誠実さ加減では、誰が見たって平和島静雄の方に、軍配をあげるだろう。
切ないが、これが現実だった。
『み、未来は判らないぞ。私は、熱烈に静雄の恋を応援する!! 帝人は絶対静雄とゴールインして、二人は末永く幸せになるんだ。私の目の黒いうちは、その結末以外、断固認めない!!』
果たして、首なしライダーに目などあっただろうか?
ぽけぽけな帝人は、疲れたのか、ごそごそと再び体を動かし、正臣の腕の中で、寝やすい場所探しにいそしみだす。
何となく、お開きな空気が漂いだした時、門田の携帯が鳴り響いた。
「はい……、ああ俺だ……、はぁ? 静雄が泣きながら、黄巾賊の連中と暴れてるって?」
再び、エマージェンシー発動だった。
作品名:ふざけんなぁ!! 2 作家名:みかる