迷惑な感情
3つ目 直接は恥ずかしいから影からこっそり
新宿にある職場に出向いた矢霧波江は、来た早々後悔していた。
一言であらわすならば‘気色悪い‘である。
目の前には幸せ絶頂というように、花やらハートやらを無駄に飛ばしている上司の姿...
「....なにかいい事でもあったのかしら?はたから見れば来た早々帰りたくなるわよ」
「あれ?波江いたんだ。それよりも聞いてくれよ!コレ帝人ちゃんの手作りのクッキーなんだけど、かなり美味しいんだよ!!この前のハンバーグもかなり美味しかったし。帝人ちゃんは料理上手だから、結婚してからが本当に楽しみだな~。もう!帝人ちゃんラブ!!」
声をかけられて初めて波江がいる事に気がついたみたいだが、気がついてからがさらにウザかった。
よくノンブレスでそこまで言えるものだと感心する。
「よかったわね...。それより、そういうのを貰える程度には仲良くなっていたのね」
「ん?まだそこまではいってないよ」
「だったらそのクッキーやらハンバーグやらはどうしたのよ?」
「このクッキーは学校の調理実習で作ったヤツなんだけど、学校まで行って帝人ちゃんの鞄から貰ってきたんだよ。で、ハンバーグは帝人ちゃんが寝ている時に部屋に入って、冷蔵庫に入ってるのを貰ったんだよ」
当然でしょ!という感じで幸せそうに思い出している臨也の姿に、波江は吐き気がこみ上げてきた。
「あ、あなた.....」
信じられないという感じの波江の態度に臨也は不思議そうな顔をした後、頬を少し赤らめて一言呟いた。
「だって、直接もらったりしたら恥ずかしいじゃないか」
------------ああ....本当に気持ち悪い-----------------