迷惑な感情
9つ目 愛しているからなんですよ
「か、帰ってください!あ、でもその前に鍵!合鍵は返して下さいね!それと、私の前にしばらく現れないでください!そうじゃないと静雄さ......」
「黙って....」
顔を青ざめた帝人ちゃんは俺に文句等をいってるけど、その言葉自体は俺の愛の深さをまだ理解できてないから仕方ない。
けれど...
けれども...
帝人ちゃんの口から俺以外の男の名前...それも大っ嫌いな静ちゃんの名前なんてありえないでしょう?
俺はとっさに帝人ちゃんの口をふさいだ。その時の声は、俺も今まで出したことがないんじゃないかってくらい低いものがでて、帝人ちゃんは一瞬ビクっとしてしまった様だ。
「帝人ちゃん。俺以外の名前...それも静ちゃんの名前を出すなんてありえないでしょう?絶対にしちゃいけない事だよ。ね?」
にっこり微笑んであげれば、帝人ちゃんはさらにビクっと身体を震わせた。
「帝人ちゃんは、さぁ。俺がそれだけ帝人ちゃんの事を人というカテゴリーではなく、個人として愛しているかを分かってないんだよ。俺もさぁ、初恋って事でいろいろ勝手が違って上手く帝人ちゃんに伝えられなかった部分も多かったのも事実だしね。だけど、もう遠慮はしないから!ちゃんと俺の気持ちを帝人ちゃんにはわかってもらわなきゃ!」
「...あ、あの。私は...臨也さんの事を今まで親切で頼れるお兄さんって感じで見ていて...。恋人とかそういう気持ちで見れない...です。」
小さいけれども、しっかりした言葉で返してくる。
でも、それは仕方がない...かな?
帝人ちゃんをデーターとしてだけどずっと知っていた俺と違って、帝人ちゃんはまだ知り合って数ヶ月だもんね。
「うん。でも、帝人ちゃんも俺の事時間をかけてしっかり知れば、きっと好きになるよ!だって、俺が帝人ちゃん自身を愛して愛して仕方がないのに、帝人ちゃんが俺を愛さないなんておかしいもんね!」
「!!なんで、そう...な....る.....あ、あれ.....?急に..ね..む..く......」
いきなり立ち上がろうとした帝人ちゃんは、急にバランスを崩してそのままズルズルと座り込み眠ってしまった。
実は帝人ちゃんのお茶の中に、話している隙をついて睡眠薬を入れておいた。
昨日、趣味である人間観察用に、睡眠薬をコートのポケットの中にいれていたのをとり忘れて、そのまま入っていたのだ。
(取り忘れててよかったよ。)
「帝人ちゃん、俺と一緒に新宿に帰ろうね。それでずっと暮らして俺の事を知って、俺を愛して結婚して...もうずっと一緒だよ!!」
眠った帝人ちゃんをお姫様抱っこしつつ、この場をくるくる回る。
これからが本当に楽しみだ!!
だって、コレは愛しているからこそなんだから!!
眠り姫は
気がつかないうちに死神に連れ去られて行く