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【APH】詰め放題パックそのに【伊独】

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ハチミツ


 それは熱に蕩けて、喉元を緩やかに落ちていき、癖になる甘さを残していく――
 そんな、蜂蜜にも似た想いだった。


「俺にはね、心に決めたひとがいるの」
 だからごめんねとだけ告げて、そのひとは笑った。
 そのときの彼の笑顔はどこまでも切なく、甘く、どこかほろ苦い笑顔。
 あぁ、このひとはこんな風にも笑うんだと、私はそのとき初めて知った。私が知っている彼は、年齢よりも幼く見えるような笑みしか見せなかったから。
「きっと、叶わないんだろうけど」
 叶わない恋というものは何よりも悲しくて、空しいもの。
 それと知っていて、そのひとは……夢見るような声で言うんだろう。
「……叶わないと知っていても、他のひとと付き合う気にはなれないの?」
 そんな私の言葉にも、彼は少しも迷惑そうな表情を見せない。それどころかさっきよりも笑みが深く、柔らかくなっているような気さえする。
「ならないよ」
 それは確固たる意思を持った響き。
「そんなことをしたら、君にもそのひとにも失礼だからね」
「――どんなひとなの?」
「綺麗なひと」
 普通なら気を悪くするような質問にも、笑顔のままで、歌うように、そのひとは言う。
 夕日を浴びてオレンジに輝く髪がキラキラ綺麗で、この世界に彼よりも綺麗なものなんてないんじゃないかと思った。
「怒ってばっかだけど、可愛くて、綺麗で。いいひと、だよ」
「……そう」
 語る彼は優しすぎて、堪え切れず涙が溢れて頬を伝う。
 それを見た彼は苦笑して、ごめんねって謝った。
 そんな彼に、私はふるふると首を振り、乱暴に涙を拭った。だってあのひとは悪くない。泣くのは勝手すぎる。これじゃぁ慰めてくださいって言っているようなものだ。それはいくら何でも虫が良すぎる。
「(泣き止め……ばか、ぁ)」
 念じても、念じても。
 涙腺が崩壊してしまったみたいに、涙が止まらなくって。
「……ごめんね」
 頭を撫でてくれる手は温かくて、それが切なくて、嬉しくて、
「ありがとう。俺なんかを好きになってくれて」
 滲む視界に映る彼は、どこまでも深く優しく微笑っていた。