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まずいまずいまずかった

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 けれど、2人いや2匹の姿が視界に入ると、皆そろって首をかしげる。
 ココとナッツは尻相撲をしていた。正確にはしっぽ相撲と言うべきか。しっぽを絡ませて相手を跳ね飛ばそうとしているのか、顔を真っ赤にして力み、何というか、こう、とても踏ん張っていた。
(???)
 喧嘩しているのかと思いきや、そうも見えない。スポーツの一種だろうか。気張りすぎて顔から火をふきそうだ。
 互いに声を出し、名前を呼びかけ合ってもいるが、一体何をしているのかさっぱり分からない。まさか同時に用を足しているわけでもあるまいし…あったりするのだろうか。
 そのとき絶好のタイミングで、妙な状況に耐えられなくなったのぞみがつんのめり、皆を巻き添えにし室内へなだれ込んだ。途端に驚愕の悲鳴が上がる。
「ナツッ!?」
「ココーっ!!」
 2匹は人間用のベットから転がり落ちる。
 ナッツは真っ赤だった顔を今度は真っ青にして、凍りつき、小さな体でぴるぴるしていたかと思うといきなりばたっと倒れた。何と気絶してしまい、慌ててココが駆け寄る。
「ナッツ!?しっかりするココー!」
「ごめんごめん、驚かしちゃって」
「大丈夫ですかっ?」
「でも、何してたの、まさか喧嘩してたわけじゃないよね」
 介抱しようと手を伸ばしてもココはそれを拒み、ナッツを毛布の中に押し込めようとする。ずるずると、むしろぎゅうぎゅうと、とにかくナッツを背後に隠そうとしていて、皆はまた首をかしげた。
「な、何でもないココ、気にするなココ」
「どうしたの?ココ、なんか変だよ?」
「本当に大丈夫かしら。さっきまであんなに元気だったのに…」
「やっぱり喧嘩してたんでしょう」
 少女らに詰め寄られて、ココは人間の姿に転じた。変身したそばから座り込み、クッションを膝を上に置いて、ぶんぶんと手を振る。
「いや、本当に何でもないんだ。すまなかった、ちょっと…その…いやいや、何でもないから!み、店を開けたままだったな、悪いけど様子を見てきてくれないかッ?」
 いつもピンピンしている癖っ毛をさらにくしゃくしゃにして、上気した頬で焦って言い訳を並べるココを、訝しげに眺める。疑問は尽きないが、そんな彼女たちを率先して連れ立ったのはこまちだった。
「さぁ、行きましょう。お客様が来ていたら大変だわ」
「えー?」
「ココもなるべく早く下りてきてね」
「ああ、もちろんだ!」
作品名:まずいまずいまずかった 作家名:あおい